2012 Fiscal Year Research-status Report
キャリア発達と意味形成の関連性に関する国際比較論的実証研究
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24730329
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
李 超 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10614646)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | キャリア発達 / コミュニケーション / 意味形成 / トランジション |
Research Abstract |
本研究は、日本企業と中国企業のキャリア形成とコミュニケーションによる意味形成の関連性を定量的、定性的に分析し、その特徴を比較文化論的に解明して、労働市場や人材の流動化に対応した企業の効果的な人材育成に対する実践的なキャリア開発モデルを提示することを目的としている。 そこで、本年度は、キャリア論やコミュニケーション論等の先行研究を文献的に整理し、さらに本研究の理論構築のための新たな概念枠組みの検討とモデルの構築を行った。また、構築したキャリア形成とコミュニケーションの意味形成モデルに対して、パイロット調査を行い、意味形成によるキャリア発達過程の理論的フレームワークやモデルの妥当性を分析した。さらに、その理論的分析モデルに基づき、質問紙調査表を作成し、企業の従業員を対象に質問紙調査を行った。そして、その中の従業員10人に対してインタビュー調査を行った。 今年度の取組みにより、企業従業員のキャリア行動の特徴を抽出し、特に、転職や人生の危機ないし節目などのトランジションにおける質的に大きく成長するキャリア発達過程を分析することができた。本年度の成果は、次年度に実施予定の企業の従業員のキャリア発達に対する本格的な質問紙調査とインタビュー調査、および日中キャリア行動の特徴の解明、さらに流動化に対応するキャリア開発モデルの構築に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、先ずキャリア発達に関する先行研究のために文献研究を行い、キャリア発達の理論的枠組みとモデルを構築することであり、次に郵送による質問紙調査を行うことであった。さらに定量的分析では捉えられないキャリア形成過程についてインタビュー調査を行い、特に、転職や人生の危機ないし節目などのトランジションにおける質的に大きく成長するキャリア発達過程を分析することであった。 そこで、本年度は、まずキャリア発達とコミュニケーションの英文、和文図書・雑誌等を購入し、文献研究を行った。そして、キャリア関係の報告資料収集活動も実施した。本年度の文献研究と資料収集により、意味形成の観点からキャリア形成とコミュニケーションの関係モデルの構築を試みた。そして、このモデルの妥当性を検証するためにパイロット調査を行った。パイロット調査の結果に基づき、質問紙調査表を作成し企業従業員から調査協力も得た。またトランジションを経験した10名の調査協力者にインタビュー調査を実施して、コミュニケーションによる意味形成過程と、一皮むけるような経験(金井、2002)の意味形成(キャリア発達)過程をある程度解明できた。本年度は、当初の研究計画通り、順調に研究を実施したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の研究成果に基づき、さらに外資系中国企業と日本企業の従業員のキャリア行動に関して質問紙調査を行う。また質問紙調査による定量的分析では捉えられないキャリア形成過程についてインタビュー調査を行い、特に、転職や人生の危機ないし節目などで大きく飛躍するキャリア発達過程を分析する。これらを統計処理し、日本企業と中国企業の従業員のキャリア形成過程のそれぞれの特徴を比較文化論的に解明する。 具体的には、まず本年度で作成した質問紙調査表を使用して、日本企業と外資系中国企業の従業員に配布、回収を行う。この調査結果を本年度の調査結果と比較することで、日本と中国のキャリア発達のそれぞれの特徴の違いを分析する。 次に質問紙調査票に回答し協力してくれた方々にインタビューを行い、彼らが転機や節目などの危機が起こった時に、それを乗り越えるために、他者(同僚や上司、友人など)とどのようなコミュニケーションを行い、危機をどのように意味づけ新たな意味を形成したかについて分析し、トランジションにおけるキャリア形成過程について解明する。 最後に、本研究成果を研究に協力した企業の方々にフィードバックし、また学会で報告し、論文を作成して成果を発表する。特に、日本の経営学関係の学会誌に投稿する。これによって、本研究の成果をキャリア論や組織行動論あるいは人的資源管理論の発展に貢献できるようにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は質問紙調査に関しては日本企業と中国企業の従業員に合計約1000名について行うので、郵送経費としての通信費が必要である。 さらにインタビューを行うために日本と中国の企業訪問を4回程度予定している。日本国内では関西を中心にしているが、本研究での協力企業の関係で九州や東京への出張を予定しており、また中国では上海市、北京などを中心に出張するので、その旅費が必要である。また日本での学会や研究会で本研究の成果についての報告のための出張、および海外での経営関係の学会での報告も予定しており、その出張経費が必要である。 インタビューのデータのテープ起こし、および質問紙調査の入力等は大学院生のアルバイトを依頼する予定である。さらに研究成果報告書の作成経費も予定している。
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