2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
菅野 洋介 東洋学園大学, 現代経営学部, 講師 (00579980)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 組織設計 / デザイン・マネジメント / 製品デザイン開発プロセス / 製品開発 |
Research Abstract |
本研究の目的は、企業における製品の根本的な差別化と競争優位の創出に貢献するような優れた製品デザインを創出するための組織的要件を明らかにすることである。とりわけ、先進性や革新性の高いデザインの創出を促す、組織構造と開発プロセスの設計における重要な要件とそのメカニズムを解明することを目指している。 今年度は、まず、デザイン開発に関わる組織構造と開発プロセスを統合的に分析・説明するための分析枠組みの構築に取り組んだ。具体的には、組織設計論、製品開発論、デザイン・マネジメント論、デザインに関わる認識論を中心とした既存研究レビューを通じて、デザイン活動に関わる組織構造と開発プロセスに特有の課題や重要な論点を導出した。次に、導出した課題や論点に基づき、デザインにおいて高いパフォーマンスを発揮している企業の事例調査(総合家電メーカー、日用品メーカー)を行い、いかなる組織構造と開発プロセスの仕組みにおいて、いかなるデザイン・アウトプットが生み出されているのかを定性的に分析すると同時に、新たな変数の発見や仮説の構築を行った。 併せて、予備調査として行っていた質問票調査の結果をもとに、先進性・革新性の高いデザインや統一されたデザインの創出において高いパフォーマンスを発揮している企業において、いかなる組織的要件がデザイン・アウトプットの性質にいかなる影響を及ぼすのかを定量的に分析した。 これらの調査および分析を通じて、デザイン開発に関わる組織構造、製品開発プロセスにおけるデザイン部門の関与の仕方、デザイン開発に関わる部門間調整、デザイン開発に関わる権限などの要因が、デザイン・アウトプットにいかなる影響を及ぼすのかを明らかにした。これらの研究成果には、既存研究において議論されてこなかった新たな知見が含まれているとともに、今後の研究をさらに発展させるうえで重要な発見が含まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画では、先進性・革新性の高いデザインの創出を促す組織構造と開発プロセスの要件やメカニズムを分析・説明するための分析枠組みを構築することを目標として設定していた。特に、デザインに関わる組織構造や開発プロセス上の特にどのような側面を重視して調査や分析を行えば良いのかを検討し、重要な説明変数や論点を明らかにすることとなっていた。また、導出した分析枠組みにもとづき、日本の製造業企業を対象に事例調査と定性的分析を行い、組織構造・開発プロセスにおける要因とデザイン・アウトプットの性質との関係を論理的に解明していくこととなっていた。 今年度は、既存研究レビューの検討を通じた分析枠組みの構築と、それに基づいた企業の事例調査(総合家電メーカー2社、日用品メーカー1社)を行い、いかなる組織構造や開発プロセスの中でいかなるデザイン・アウトプットが生み出されているのかを明らかにすると同時に、それらがどのような論理によるものなのかを分析枠組みにもとづき検討することができた。また、この研究成果は、国際学会において報告するとともに、論文として学会誌に投稿し、採択されている。 さらに、日本のグッドデザイン賞受賞企業を対象として行った予備的調査の結果を分析し、デザインに関わる様々な組織的要因とデザイン・アウトプットの関係を定量的に分析し、それらの関係を明らかにすることができた。これらの研究成果は、国内の学会において報告するとともに、学会誌に投稿し、掲載されている。 以上のように、当初の計画にもとづいた調査や分析ができただけでなく、それらの研究成果を国内外の学会で発表してきたことから、当初の計画に沿って進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、事例研究対象企業を広げることで、分析枠組みの適用範囲や条件を明らかにしていくと同時に、新たな変数の発見やメカニズムの解明を行うことで、分析枠組みの精緻化を図っていくことが必要と考える。 そのため、昨年度まで事例調査を実施してきた日本の総合家電メーカーの中で、新たな対象企業を追加するとともに、自動車メーカーや日用品メーカーなど、異なる産業における企業の調査を行う予定である。そうすることで、同じ産業内企業間の比較検討や、異なる産業間での比較検討が可能となり、新たな変数の発見、メカニズムの解明、分析枠組みの精緻化をより効果的に図ることができるものと考える。 具体的には、対象企業において、デザインに関わる戦略や組織構造がどのように設計されているのか、製品開発プロセスに対してデザイン部門がどのように関与しているのか、デザインに関する意思決定がいかに行われているか、デザイン部門と他部門の相互調整はいかに行われているのか、デザイン部門内の分業や協業はいかに行われているのか、といった内容を詳細に明らかにしていく。 そして、その中で、デザイン活動において必然的に生じる知識・情報の移転・共有・統合がいかに達成されるのか、それは、どのような組織調整メカニズムによって促進されたり阻害されたりするのかを明らかにしていく。 さらに、以上の調査結果を踏まえ、デザインに関わる組織構造と開発プロセスの相互関係や適合関係を検討するとともに、組織構造と開発プロセスに関わる諸要因が、デザイン・アウトプットの性質をいかに規定するのか、それがいかなるメカニズムによるものなのかを解明していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度における研究費は、主に、以下の項目を中心に計上している。 第一に、引き続き既存研究の検討と整理を行うための関連図書や論文を購入する費用を計上している。具体的には、デザイン・マネジメント論関連を中心として、経営組織論、経営戦略論、製品開発論、デザイン関連の文献を想定している。 第二に、国内企業に対する現地でのインタビュー調査を行うための旅費を想定している。対象企業は未定であるが、東海・関西地方に所在する企業にインタビューする際、そのための旅費を必要とする。 第三に、研究成果を随時国内外の学会において報告していく予定であるため、それらに必要な旅費等を計上している。今年度は、国内と国外で1回ずつの研究発表を行う予定である。 第四に、インタビュー調査内容の文字起こしや英文論文の校正など、調査結果データの管理や国際学会での研究報告、国際学術誌への投稿の際に要する英文校正費用などを計上している。 最後に、調査結果のデータの計量分析等において他の研究者の協力を得る予定であり、分析や学会報告、論文執筆に関わる打ち合わせのための、旅費等を計上している。
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Research Products
(7 results)