2012 Fiscal Year Research-status Report
公企業の効率性:証拠に基づいた医療システムのガバナンスの検証
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24730351
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小島 愛 立命館大学, 経営学部, 准教授 (80513192)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公企業 / 効率性 / NHS / ガバナンス |
Research Abstract |
本研究では、先進諸国の公企業において非効率な経営が行われがちであることに着目し、イギリスの医療制度改革に伴うガバナンスの変化に焦点を当てながら、公企業における効率的経営の阻害要因を分析している。初年度の研究内容は、イギリスの医療システムがなぜ非効率なガバナンスに陥るのか、またそれは公企業のどの部分に表れるのか、に関して把握するため、組織内部の実態調査につとめた。具体的には、高齢者が多く医療の需要が大きいイングランド南部地域の財源管理主体に対して、予算管理の面での実務上の問題点などをインタビューした。また、財源管理主体の傘下のクリニックと病院に対して、予算の制約内での良き医療の実践についてインタビューを重ねた。それらを通じて、財源管理主体の意思決定や予算配賦の実情、および傘下の病院経営者・医師に対するインセンティブ付けに関する実態が明らかになった。予算が余り有効に使用されていない、非効率経営をしている組織も明らかになった。 ここでの結果は、日本における公企業のガバナンス改革(独立行政法人や自治体運営の組織など)に関する議論に学術的・実践的な示唆を与えるので、できるかぎり早く論文執筆および学会発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、文献収集、仮説の設定、インタビュー先の選定、インタビューの実施、データ整理、論文執筆といった一連のプロセスがおおむね順調に進んでいる。具体的には当初予定していた3つのテーマのうち、「財源管理主体が予算増につれてどのように予算を使用するようになったか」というテーマ1において最もよい進捗が見られた。財源管理主体について、各種資料を用いて予算の使途を経年的に明確に把握できたことが大きい。またその予算使途に関して、担当者への質問を繰り返すことによって意味合いをも理解することができた。 上記の過程で学会・研究会で関連分野の研究者および実務家とのディスカッションも積極的に行った。できる限り早く論文を公刊し、その後社会貢献したいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの経過ではテーマ1での進展が最も大きかったが、テーマ2(各財源管理主体に対する予算増額率と各財源管理主体の経営陣に対する報酬増額率との関係が経年的にどのように変化したのか)、および、テーマ3(財源管理主体に対する政府の予算増額に伴い、クリニックの医療従事者数や雇用形態などがどのように変化したか)にも注力する。テーマ2にはより多くの時間を文献収集・データ整理に割く予定である。財源管理主体がイングランド全域に160ほどあるため、また財源管理主体によって経営陣の報酬について明記しておらず問い合わせる可能性があるためである。テーマ3についても、データ整理に多くの時間を割くだろう。これについても、クリニックによってデータの公開が進んでいない地域があるため、問い合わせの必要と可能性があるためである。 そしてテーマ1,2,3ともに取り組んだのち最終的には、イギリスの公企業でのガバナンスの実践を、日本の各公企業での運営に生かすことができるように比較研究をしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
テーマ1については、これまでのように文献収集とインタビューを繰り返すことによって順調に理解が進めば論文の公刊に至る。今年度より注力するのがテーマ2と3であるが、これらについては初年度よりも文献収集に多くの時間を割き、データの整理に努めたい。したがって、まずは印刷代やアルバイト代などに研究費、備品の購入を充てたい。 また上記の過程で財源管理主体への問い合わせもするがそれでも理解できないことがあった場合、また、財源管理主体の運営形態が若干変化したこともあり、制度の変化に対する今一度の理解のためなどに、イギリスでの聞き取り調査をする必要が生まれる。そのため、旅費と宿泊費としても使用したい。 さらに最終的に日本の公企業経営の実態調査も文献収集および聞き取り進めていきたい。このため図書費と旅費および宿泊費にも充てたい。 繰越に関して、昨年度はイギリスの医療システムの制度変更に伴いテーマ3に多くの時間を費やしたため、テーマ2と3で行う際に発生すると予測していた印刷代やアルバイト代をすることができなかったことにより発生した。今年度それらを実施することによって、昨年度の繰越額を使用していきたい。
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Research Products
(1 results)