2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730357
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
石塚 史樹 西南学院大学, 経済学部, 教授 (40412548)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドイツ / マール / レーヴァークーゼン |
Research Abstract |
当該年度においては、ゴールトシュミット社文書館で合計20日間、バイエル社文書館で合計10日間の資料調査を実施した。前者では、1900年代~1960年代に勤務した3代のR&D部長、1980年代まで勤務した2名の事業部長、一名の取締役、1950年代から1970年代にスタッフ部門の部長職を務めた事務系のマネージャーの人事書類10名について人事書類を分析し、同社のマネージャーに主に第二次世界大戦後に適用された人的資源管理について、これまで知られなかった変遷を見出した。特にR&D部長については、個人業績に基づいた発明報酬がインセンティブとして適用された期間が非常に限定されていること、また、学問活動の自由度を認める形での人的資源管理が有効に作用したことを明らかにした。後者では、バイエルの創業時(1860年代)以降の取締役、部長、セールスエンジニア、経営学部大卒社員、大卒化学者を中心に人事書類を分析すると同時に、自らが提示した人的資源管理の標準化テーゼを立証するために、共通規則を多くの資料から抽出する作業に集中した。その結果、取締役の人的資源管理については、取締役グループの中での標準化の進展が、創業者一族のそれを除いては確実に立証できること、一方で、自然科学系の大卒者の発明報酬については、これまで第一次世界大戦以降は年功給に完全移行したと思っていたものが、実際はかなり複雑な計算に基づいて、ある程度個人業績を反映して算出される仕組みに代わっていたことが明らかとなった。また、自然科学系のマネージャーについては人的資源管理の仕組みが、1970年代に至るまである程度まで説明できる段階まで研究が進んだが、事務系のマネージャーについては、特にボーナスの額が説明できないばらつきを見せることが多く、今後の研究続行が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゴールトシュミット社文書館、バイエル文書館とともに、ここ数年で閲覧可能な人事書類の数が増えていること、また、企業の担当部署がかつてのトップマネージャーが個人的に管理していた人事関係の書類を次々と文書館に委ねていることにより、これまでブラックボックスだったマネージャー向けのインセンティブの仕組みが、加速度的に解明できるようになったことによる。また、昨今において博士論文や教授資格論文の形での学術出版物が、特にバイエル社の社史について増えており、企業の全体的な歴史、技術史、国際的展開を含めた一般的な事項について、一次資料をはじめから分析する労力を使うことなく概観できるようになったことが、より効率的に自身のテーマに取り組める環境を醸成してきた。加えて、研究の進展自体が、現地の文書館員や企業関係者、大学の研究者の助言をますます得やすくしている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴールトシュミット社においては何をおいても、さらに多くの重要人物についての人事書類の分析を進める必要がある。今年から来年にかけて、更に多くの人事書類が文書館に入ることになっている。そのため、一刻も早くこれらの書類の分析を行っておくことが、ドイツ企業の人的資源管理研究というテーマで他国の研究者との差を広げるためには不可欠である。バイエル社においては、今後事務系の部長職の人事書類と子会社の社長のそれを中心的に探ることで、1970年代までの部長職までのマネージャーの人的資源管理については全体像が描き出せる予定である。一方で、第二次世界大戦後の取締役の人的資源管理については、人事書類が一切見つからないことから、直接的な資料を用いた分析が今のところは見通しが立っていない。一方で、これは今回の金融危機以降問題となったマネージャー経営者の経営モラルの問題を考えるうえでも重要な課題であることから、「経営者の行動規範の変化」というテーマを特に別に立て、独立のプロジェクトとして研究を進めねばならないのではないかとも考えるようになった。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度と同様、9月と3月に上記の問題意識に基づいて出張調査を進める予定である。ただし、資金の配分上の関係から、次年度はゴールトシュミット社、バイエル社文書館それぞれにつき一週間ほどの滞在にとどめる予定である。当該研究計画はとにかく遂行に時間がかかり、それに伴い出張費用が必要となる。研究成果がすでに多く出ているため、学会・研究会での報告発表ならびに論文をできうる限り頻繁に行う予定である。ただし成果の取りまとめにはそれなりに時間がかかるため、ご理解を賜りたい。
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