2014 Fiscal Year Research-status Report
食品の情報品質が消費者行動に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
24730363
|
Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
森 邦恵 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (10360893)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 消費者行動 / 品質の経済的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水産物を対象に、財・サービスが保有している多様な品質が消費者に認識されたのち、その後の消費行動にどのような影響を及ぼすか、情報の非対称性の大きさを意識しながら、数値的評価を導出することである。 25年度までの本研究では、水産物の品質評価について、「鮮度」「価格」に関する仮説を検討した。26年度は、既存研究と統計データの整理、また生鮮魚の国内市場で大きな割合を占めるサケ市場の生産現場の国内外視察を通じて、消費者に「鮮度」「価格」を評価させている要因・プロセスについて考察を行った。 「価格」の形成要因には、量的要素と質的要素のどちらの影響も存在することは既存研究で指摘されている。しかし、定量的にその差異を明らかにする研究はほとんどない。詳細な市場データの取得が難しいこともあるが、農作物よりもさらに個体差による品質の差異が大きく、商品1点毎の市場評価が難しいことが挙げられる。 「鮮度」の形成要因については、以下のことが考察された。水産物の品質には、水産物そのものの物理的品質(産地、含有される脂分など)と、水産物が消費者に最終的に提供される場所では技術の付加価値が品質として存在する。「鮮度」品質は流通技術であり、消費者はその水産物商品への評価を行っているというより、鮮度を担保する「流通」「小売」業者の品質を評価しているともいえる。これは、工業製品には見られない食品ならではの特徴である。 以上の点を確認するため、集計データではあるが流通品質に差があると思われる、日本国内での魚種別の都道府県別購入量を調査した。購入傾向には地域差が認められ、流通品質の差によって、消費者の魚種購入行動が決定される可能性を示した。消費者の意思決定プロセスとして、供給側の事情によって流通させられた商品に対して、購入選択を行っていることが推測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度同様、別の研究プロジェクト(農林水産省技術会議『食料生産地域再生のための先端技術展開事業』網羅型研究課題2、「サケ科魚類養殖業の安定化、省コスト・効率化のための実証研究」研究グループ・分担者)に参加しながら、本研究を進めている。 本研究はサケに限らず水産物全体の消費者行動を対象にしているため、上記プロジェクトとは内容が異なる。しかし、その内容は本研究にも示唆を与えるものが多い。特に、26年度は、日本国内の水産物市場の中で大きな割合を占める、サケ市場の養殖現場と流通の仕組みを視察することができた。この中で得られた知見は、文献調査では取得できないものであり、特に情報の非対称性による消費者の品質認識のヒントを得ることができた。アンケート調査への計画も目処がついており、おおむね想定内と判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、成果の発表と取りまとめを行う。
|
Causes of Carryover |
アンケート調査における項目設定の精査のため、26年度中に実施をしなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査費用に80万円、その他旅費に30万円、書籍・資料購入に10万円を予定している。
|