2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730364
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伴 正隆 日本大学, 経済学部, 准教授 (50507754)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 新製品採用 / クラスタリング / ベイズ統計 |
Research Abstract |
研究成果として,消費者を新製品の採用時期によってカテゴリに分類し,かつ消費者それぞれのマーケティング変数に対する反応を推定するモデルを開発した.具体的には,消費者間で異質なパラメータを持つ階層ベイズ・プロビットモデルに対し,新製品採用時期に関する閾値パラメータを導入することで,新製品採用時期を基準として同質的なマーケティング反応をもつ消費者が分類されるモデルである.モデルはマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法によって推定し,カテゴリに分類された消費者の属性やパラメータ推定値を要約することで,カテゴリごとに性質を記述できる. 家庭用洗剤カテゴリのID付きPOSデータを用いた実証分析では,このデータに関しては5つの消費者カテゴリを持つモデルが最もデータへの当てはまりが良く,分析において指定した新製品を最初に採用するカテゴリは新製品の市場投入後およそ13週目までであり,このカテゴリの消費者は洗濯洗剤カテゴリのTVCMに頻繁に露出する傾向にあること,最初と2番目のカテゴリはテレビ広告に対して正の反応を示していることが示された. マーケティングにおいて現象の経時的変化を捉えた概念には,社会学的な視点からイノベーションの採用者特性を採用時間順に記述しているロジャースのイノベーション普及プロセスや,製品の市場投入から退場までの最適なマーケティング戦略を提示している製品ライフサイクルマネジメントなどがある.いずれも時間経過とともにマーケティング対応を変えることの必要性を示すもので,時間を基準とした消費者クラスタリングは実務意思決定に有用な情報を提供するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実施計画にある大規模POSデータの整備については新規に導入したデータベースソフトへの習熟が進まないこと,モデル開発に計算機を優先して使用したことなどから滞っている. ただ,既に整備された別データを使用することでモデル開発については順調に進んでおり,計画の本質的な部分は遂行できているので,「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発したモデルでは新製品の市場投入について,ある1回の事象だけを扱っている.しかし,購買頻度の高い消費財では特に,ライン拡張等による新製品の市場投入は繰り返し実施されている.25年度の計画では今回開発したモデルを拡張し,2回目,3回目の新製品投入に対して,例えば1回目の採用者がどのようなマーケティング反応を示すかを分析するモデル開発に取り組む. ただし,今回開発したモデルは有限個の消費者クラスタ数を事前に設定する必要があるが,近年推定方法の開発が進んでいるノンパラメトリックベイズのディリクレ過程混合モデルでは無限個の消費者クラスタに対応可能であり,クラスタ数をパラメータとして扱い,これを推定できる.したがってまずこの手法を用いた拡張により既に開発したモデルの精緻化を進める. また,研究の推進にあたっては学会報告の機会を積極的に利用し,モデルに対するコメントを参考にしながら着実に研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費について,中途半端な金額が残ったため,無理に使用することの無駄を回避するため25年度に繰り越した.25年度は多くの研究報告の機会をもつ予定であり,それに必要な旅費,研究発表に必要なノートPCやプロジェクタ等機材の整備に研究費を充当する.また,モデルの推定に使用する計算機の不足が計画遂行の障害となっていることから,優れた演算能力をもつ計算機と,行列演算ソフトの導入を検討している.
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