2012 Fiscal Year Research-status Report
選択的不感化理論によるフレーミング効果の数理モデル化
Project/Area Number |
24730367
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
諸上 茂光 法政大学, 社会学部, 准教授 (60422200)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 意思決定モデル / 情報表現 / ブランド / 文脈情報 / フレーミング効果 |
Research Abstract |
本研究では,選択的不感化理論と2属性仮説という二つの計算論的脳科学の理論をフレーミング効果に適用し,状況依存的な意思決定をする消費者の脳活動が「なぜ」「どのように」変化するかを説明する数理モデルの構築と検証を行うことを目的とした. そこでまず文献調査を基に製品知識やブランド情報に関する消費者心理学的な議論及び概念モデルの整理を行ったところ,消費者は意思決定の環境や文脈によってヒューリスティックス処理が行われると言われていることや,フレーミング効果が存在する事が分かった.その一方でヒューリスティックスの具体的な脳内メカニズムやそもそも製品やブランドの脳内表現形成方法については未解明であることも分かった.また,文献レビューを通して,状況や文脈をモデルの中にどう規定されるのかについても,具体的な議論はほとんどなされていないことがわかった. 以上のレビューを基に,計算論的脳科学の知見を応用し,文脈および商品情報の脳内表現モデルを構築した.これを用いて数値シミュレーションを行ったところ,文脈の切り替えによって参照される属性が規定され,これが文脈を表現する情報として使用できる可能性が示唆された.今年度の学会にて発表を行うためここまでの議論について現在投稿準備を行っているところである. また,以上の検討を基に,消費者が意思決定を行う際の視線追跡実験によって,本研究で構築されたモデルの妥当性の検証を行っているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,文献レビューおよび数理モデルの構築による理論研究と視覚心理実験による実証研究の二本の柱によって研究を遂行している. このうちの理論研究については,十分な文献レビューおよび数理モデルの構築を行うことができ,ここまでの成果を発表するところまでたどり着くことができている.(現在投稿中) その一方で,実証研究については,本研究で初めて導入した注視点測定システムにおいて、計測・分析するためのソフトウェアプログラムの開発が中途であったため、納入後半年以上予備実験を行いながら納入業者に不具合の修正などソフトウェアのアップデートを行ってもらうという作業を繰り返す必要があり、実際の測定実験が可能になったのは2月を過ぎてからであった.そのため、研究の進捗が当初の予定よりやや遅れてしまっている.ただし,本研究のように全く新しい手法に挑戦する場合にはこうした時間的な遅れはある程度避けられないものと考えられるため,研究全体の進捗度の評価を大きく損ねるものではないと判断する. 以上の事情を鑑みて,研究全体の達成度はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの進捗状況を踏まえ,今年度は以下の2つの柱に沿って研究を推進していきたい. まず,理論研究については初年度に行った文献整理および数理モデルの構築について現在投稿中であるが,これをできるだけ速やかに公表できるようにさらに作業を継続する. 一方で実証研究については初年度には実験環境の整備調整に予定より時間を取られてしまったものの,予備実験によって実験のノウハウを得ることができ,予備実験では実際に少数のデータを得るところまで進んでいる.今後の推進方策としては,これまでに得られた実験データの分析に基づき,本実験の条件や課題を最終的に決定し,理論研究で構築した数理モデルの妥当性を検証しうる心理データを収集する予定である.また,この実証研究の結果についても理論研究の成果とともに公刊する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
視線測定システムの分析ソフトウェア開発費用,被験者に対する謝礼および結果公表に関わる諸経費を中心に使用する予定である.
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