2012 Fiscal Year Research-status Report
市場志向強調の際、リーダーシップ・スタイルが市場志向および製品成果に及ぼす影響
Project/Area Number |
24730369
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩下 仁 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (30608732)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 市場志向 / マーケティング / 製品開発 / リーダーシップ |
Research Abstract |
本年度における研究成果は主要概念である「市場志向」と「リーダーシップ」に関する先行研究をレビューした上で命題モデルを導出した点である。「市場志向」に関してはJournal of Marketing誌やJournal of Marketing Research誌といったトップジャーナルを中心に1990年~2012年に至るまでのレビューを実施した。結果として、検索された論文数が約1000本に及んだため特に鍵となっている論文を中心にレビューを実施している。又リーダーシップ・スタイル研究に関してもレビューを実施している。Lewinらによるリーダーシップの類型に始まり (Lewin et al. 1939) 、Likert (1967)、そして永田(1965)の研究といった主な研究を13本レビューした。結果として本研究の仮説モデルを分析するに当ってはBass (1985) のリーダーシップ・スタイルが適切であるという結論に至っている。理由としては以下の3点があげられる。第一に、変化し続けるビジネス環境でも変わらないリーダーシップ・スタイルである点。第二に、市場の変化を先読みできる要素が加味されたリーダーシップ・スタイルである点。第三に、実証を行なう上で分析に耐える尺度である点である。以上2つの中核的な概念のレビューから両者の関係性を解明するための命題を4つ導出している。命題モデル導出までを行なった研究成果については、商品開発・管理学会第17回全国大会にて研究報告を行なうと共に査読付学会誌「商品開発・管理研究」8巻2号へと投稿し同誌に掲載されている。以上のような内容で初年度は研究を進めてきたが、上記のようなレビューは重要な意義を含んでいると思われる。綿密なレビューを実施する事で現状の限界を鮮明にすると共に、本研究で援用する市場志向とリーダーシップ・スタイルの尺度を選定できたからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の目標は、以下の3点であった。第一に、今回使用する市場志向とリーダーシップ・スタイルそして商品開発に関する一連の主要研究をレビューすることである。第二に、日本企業のトップマネジメント層(20名程度)へヒアリング調査を実施することである。第三に、市場志向およびリーダーシップ・スタイル尺度の妥当性を検証するため、日本企業のトップマネジメント層150名を対象にインターネットリサーチを実施することである。達成度としては、第一点で述べた、今回使用する市場志向とリーダーシップ・スタイルそして商品開発に関する一連の研究のレビューと、第二点で述べた、日本企業のトップマネジメント層へのヒアリング調査を実施している。但し、第二点のヒアリング調査に関しては、初年度の達成数は3~4名であったため計画書に記載した10名を達成できていない。この原因としては、企業のマネジメント層へのアポ取りが困難であった点があげられる。次年度以降の対策としては、広報部への直接的なアポ取りを実施するのではなく、実務家時代や知人のネットワーク等を用いることで、成功確率を高めていきたいと考えている。同時に、実務家時代の人脈を活かすことでより成功確率を高め、初年度に生じてしまったタイム・ロスを、2年目に解消したいと考えている。また初年度においては、第三点として初年度遂行する予定であった、実証研究で使用する尺度の妥当性の検証にも至らなかった。しかしながら、例えば今回取り上げるリーダーシップ・スタイルの尺度選定は終わらせているといった段階まで研究は進んでいることから、本年度はより迅速に妥当性検証の段階へと至れると思われる。以上のように、初年度は計画書の目標と比べると進捗が遅れているが、2年目以降は妥当性検証をはじめとする一連のサーベイを実施することで、計画書通りの目標を達成したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、提示した研究計画に従い、以下の3点について研究を精力的に推進していく予定である。第一に、昨年度円滑に進まなかった日本企業のトップマネジメント層へのインタビューのアポ取りについては、実務家時代のネットワークを利用する事に加え、対象となる人物を知人に紹介してもらうことで、アポ取りの成功確率をより高めるようにする。さらに、工夫する点としては計画書にある通り、花王株式会社やパナソニック株式会社というような従業員数の多い企業をまずヒアリング対象とし、続いて中小企業といった従業員数の少ない企業を対象にすることで、まずは大企業のトップマネジメント層の複数名に対して積極的にアプローチをとっていく。 第二に、研究計画に記載した尺度の妥当性の検証については、既に信頼性と妥当性が確立されている頑健な尺度を援用することで、尺度項目を開発するというタイム・ロスを解消する。本研究の鍵となる概念である市場志向についてはNarver and Slater (1990) で開発された市場志向尺度を、リーダーシップ・スタイルについてはBass (1985) で開発されたリーダーシップ・スタイル尺度をそれぞれ援用する予定である。これらの尺度の信頼性と妥当性の検証には、計画書に明示したとおり、我国のトップマネジメント層150サンプルへのインターネットによる定量調査を予定している。 第三に、計画書にも記載されている通り、最終的なモデルを検証する前には、リサーチデザインを最終確認するため、身近な実務家に対するプレテスト(20名程度)、および、専門家による質問票のチェックを実施することで、調査票の最終確認を行なう。この際、対象とする実務家に関してはトップマネジメント層を対象としているため、個人的なネットワークを利用するだけではなく、知り合いの伝をたどることで、対象者(インタビュー対象者を含める)を探す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
下記に示すように、次年度の研究費の使用計画は、当初の研究計画書の研究費欄(設備備品費、消耗品費、旅費等の明細)に書いた内容とほぼ同様のものになっている。次年度については研究費として以下を使用する予定である。第一に、昨年度に引き続き、心理統計ソフトSPSS+AMOS (IBM Spss社製 Academic Authorized User Term License Statistics Base +Regression+Amos)(1ソフト×132,000円 1年間)) を計上している。この統計ソフトは次年度実施予定の市場志向とリーダーシップ・スタイル尺度そして商品開発に関する一連の変数の妥当性検証の際に必須の統計ソフトである。この際、妥当性分析の手法を調べる為の書籍(3万円分)を購入する予定である。又次年度についてはマネジメント層に対してインタビュー調査を実施する事になっている為インタビューを行なった内容を録音するためのICレコーダー(2.3万円)を購入する予定である。調査費に関しては、市場志向とリーダーシップ・スタイル尺度の妥当性を検証する為楽天リサーチ(110名の実務家)へのインターネット調査費を計上している。書籍、学術誌、論文、ヒアリング結果、上記のアンケート結果を整理するための資料整理業務に関しては昨年度と同様、資料整理のための院生アルバイトを雇用する事になっており、7.5万円を計上している。途中段階の研究報告のための3つの学会発表のための交通費としては、交通費および宿泊費として、12.9万円を計上している。同時に、調査のための交通費は年間5千円を計上している。以上のように、次年度の研究経費は、当初の研究計画通り使用する予定であるが、研究の進捗が全体として遅れているため、仮説を検証するための300名の実務家への大規模な調査費80万円は次々年度に持ち越す可能性がある。
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Research Products
(11 results)