2012 Fiscal Year Research-status Report
流通における中小小売商業者の存在意義に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
24730377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横山 斉理 日本大学, 商学部, 准教授 (70461126)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 商業 / 中小小売商業者 |
Research Abstract |
本研究の目的は、流通における中小小売商業者の存在意義を明らかにするために理論的・実証的研究を行うことである。その背景には、社会におけるインターネット販売の浸透や、中心市街地における「フードデザート」の発生、あるいは地域商業が衰退することによって住民の生活インフラや地域コミュニティが崩れつつあるなど、流通を取り巻く社会的コンテクストが大きく変化していることが挙げられる。 社会的コンテクストの変化により、従来から流通を中心的に担ってきた商業者のありようは、さまざまな形に変化している。換言すれば、社会的なコンテクストの変化を受けて商業組織の内部編成が大きく変容しつつある。こうした中、本研究ではとりわけ中小小売商業者に着目する。その理由は、コンテクストの変化が中小商業者の特質を浮き彫りにすると考えられるからである。従来の商業・流通研究においては、中小小売商業者は規模の大小によって捉えられてきたが、地域や流通全体を捉えるにあたっては、規模以外の特質をより詳細に把握することが重要であると思われるからである。 以上の問題意識に基づいて、本年度の計画は、先行研究についての文献研究を中心としつつ、適宜、フィールドでの調査や研究成果の発信を行うことであった。文献研究においては、とくに「学習」に関する研究を渉猟する中で、とりわけ組織論(組織行動論)の分野で研究されてきた概念や枠組みが本研究においても有用であることが明らかになった。また、この時点までの研究成果を学会や研究会で発信することにより、本研究と近い問題意識をもつ研究者や他分野の研究者から研究推進に有用な示唆を受けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は文献研究を中心に、適宜、フィールドでの調査や研究報告を行うことによって、おおむね順調に理論的研究を進展させることができたと考えている。 まず文献研究においては、研究推進のために必要と思われる理論や枠組みは渉猟できたと考えている。とくに「学習」についての理解に進展があった。具体的には、中小小売商業者の日常的な業務を通じた学習過程をどのような理論的側面からとらえるべきなのかについて理解を深めることができた。 理論的研究を推進するために行ったフィールドでの調査については、実務家へのヒアリングを数回実施することができた。ヒアリングによって現場の理解を深めることができ、理論的研究の方向性やどの枠組みや概念が研究推進に役立つのかといったことについて、ある程度明らかにすることができたと考えている。 理論的研究の方向性の妥当性を確認するために行った研究発表については、研究会で2回、同分野の国内学会で1回、隣接分野の国内学会で1回、そして国際ワークショップで1回の発表機会を得ることができた。研究会においては、普段からディスカッションを行っている若手研究者仲間から示唆に富むコメントが得られ、学会においては、同分野の先駆的な研究者から示唆に富むコメントを得ることができた。 研究計画全体では、中小商業者の存在意義を明らかにするための枠組みを提示し、その枠組みに基づいて仮説検証型の実証分析を行う計画である。本年度はその1年目であるが、これまでのところ、以上の通り、おおむね順調に進展していると評価することができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、初年度の理論的研究の成果を活かしながら、フィールドでの調査をさらに進めることによって、事例研究を本格的に行っていく。具体的には、流通全体における中小小売商業者の存在意義を浮き彫りにできるような中小小売商業者の事例研究を行う。 そのための方策としては、これまでヒアリングを行ってきた企業にさらなるヒアリングを行い、適宜、それを補足するための2次データを集め、場合によっては専門家からアドバイスを受けることにする。必要に応じて、データの収集・整理を外部に委託することで、研究を効率的に推進していくことにする。 それと同時に、これまでの研究成果を国内外で積極的に発表することによって、今後の研究推進(事例研究および実証分析)のためのアドバイスを多方面から得られるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度については、10843円という「次年度使用額」が生じた。理由は、国際会議に投稿するための英文校閲費用の一部が、対象学会の投稿締切期限の変更により、次年度の費用から拠出することになったためである。したがって、次年度は、この金額を研究成果を発信するための費用の一部に充てることにする。
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Research Products
(6 results)