2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730380
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
篠田 朝也 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50378428)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会計学 / 管理会計 / 資本予算 / フィールド・リサーチ |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本企業へのフィールド・リサーチを通じて、日本企業における経済性評価の変容と独自性、および、資本予算プロセス全体の具体的特徴を明らかにしようとするものであった。 当年度の、主な研究実績は2点である。第1点目は、投資決定プロセスの統制局面における調査と分析に関連するものである。この点に関連して、当年度において、複数の企業へのインタビュー調査を実施した。そのうえで、資本予算の統制局面におけるいくつかの課題の存在を抽出し、資本予算の統制局面が必ずしも多数の企業において重視されているわけではないものの、当該局面を重視している企業に関してはむしろ資本予算の経済性評価よりも統制局面のほうが重視されているといういくつかのケースを確認することができた。このように把握された状況を前提としたうえで、質問票調査から得られた定量データと合わせて、資本予算の統制局面が企業の業績に及ぼす影響に関する検討結果について成果をまとめ、学会報告を行った。この実証的な分析結果によれば、資本予算の経済性評価が洗練されていることよりも、統制局面を重視していることのほうが、企業の業績に正の影響を及ぼす可能性が高い傾向にあることが示された。 第2点目は、戦略的な投資に深くかかわる情報関連投資のケース研究に関連するものである。近年の日本企業においては、IT投資が経営戦略と整合的に実施されていないという課題が指摘されていた。本年度においては、顧客満足、従業員能力、組織能力を同時に向上させることを目指したIT化のための投資を実践した民間企業の事例に関する論文を発表した。経営戦略と整合的な情報システムの導入と活用に関するケース研究は先行研究が少ないこともあり、この成果についても一定の学術的貢献が認められるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は、特に投資決定プロセスの統制局面における調査と分析を中心に行った。これらの分析のために、複数の企業へのインタビュー調査を実施した。このインタビュー調査の結果をもとに、資本予算の統制局面における課題の存在を抽出し、確認された課題を前提としたうえで、質問票調査から得られた定量的データを利用して、実証的な分析を行った。これらの研究成果については、すでに学会(2012年度日本管理会計学会全国大会)において報告をしている。 さらに、戦略的投資に関するケースについても調査を実施した。この調査結果から得られた知見についてはすでに事例研究としてまとめて、論文として研究成果の公表をすることができた。 また、正味現在価値法(NPV法)を導入している企業に対する調査も順調に進展している。なお、当該調査に関しては、導入企業のより詳細な状況把握と複数年度にわたる状況変化の把握のため、継続的な調査が必要となることが見込まれている。そのため研究成果の公表自体は少し先になるものと思われるが、そのために必要となる先行研究のレビューおよび論点整理等の予備的作業も進めている。 以上の点から、当該研究課題は、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、本年度と同様に、基本的には調査の継続に力点が置かれることとなる。調査の進捗状況に応じて、調査から得られた内容をもとにした成果の公表を推進していくこととする。 まず、投資決定プロセスの統制局面に関連する状況把握のために複数の企業へのインタビュー調査を継続する。継続的な調査をもとに、すでに学会において報告した内容と得られたコメント等をベースにして、研究成果を論文としてまとめて公表する予定である。 つぎに、NPV法の導入の影響に関する調査についても継続的に実施する。この論点に関しては、経時的な分析を行うために、複数年度にわたって調査を継続的に実施する必要があるため、研究成果をまとめて公表することは少し先になると思われるが、成果の公表を目指して、調査以外にも、先行研究の整理、調査データのまとめ、論点の整理、定量的分析との統合等の作業を着実に進めていくこととする。調査に区切りがついた段階で、調査結果をまとめて研究成果を公表することにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
収支状況報告書の次年度使用額(9,051円)は、本年度3月中に使用した研究費のうち、支払いが次年度となったものである。
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Research Products
(2 results)