2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730382
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80323913)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 利益属性 / 国際比較 / 投資行動 / 経路依存性 / 新制度派会計学 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる平成24年度には大きく3つの活動を行った。 1つは、先行研究のレビューとそれに基づく論文の執筆である。利益属性の国際比較と企業行動との関係を明らかにするため、特に利益平準化行動や会計発生高の質が会計基準の国際的統合化・収斂化に伴いどのように変化し、それが企業の投資行動にどのような影響を与えているか、それが国際比較でみた場合、各国・各地域でどのように異なるかについて検討を行った。検討の結果、日本や韓国などのFar East諸国と米国や英国などのEnglish Speaking諸国では利益平準化行動に対する思考が異なることが確認され、それが企業の投資行動に大きな影響を与える可能性が高いことが確認された。 いま1つは、上記の検証結果に基づき、日本と米国で利益の質に対する企業担当者の考え方がどのように異なるかを確認するため、アンケート調査を実施した。調査にあたっては、米国ですでに実践されているDichev et al(2012)の研究を参照しながら、日本の担当者へのアンケート調査を実施し、その定量的な分析をスタートさせている。 最後にこれまで実施してきた利益属性の国際比較にかかわる研究論文について、国内外の学会を中心に報告活動を続けてきた。欧州会計学会、米国会計学会それぞれの年次大会や九州地域で実施されている研究会などでの研究報告を通じて、海外学会、国内学会における研究者との議論や情報共有を行った。その他、学術誌などへの投稿作業や掲載なども行った。 そのほか、研究計画書などで記述している契約的観点の研究をより進めるためのデータベースの構築なども合わせて推進しており、平成25年度における研究活動に反映させていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の狙いは、利益属性の国際比較を実践し、会計基準の特徴や変化が企業行動に与える影響を検証することにある。特に会計基準の国際的統合化・収斂化が進展する中で、それが経済や企業行動にどのようなコスト・便益を与えているかについての関心は急速に高まっている。しかしながら、そうした研究の多くは、株式市場における透明性の増大や作成コストなどについてものが多く、実体経済を支える企業行動への影響の一側面のみに注目しているケースも少なくない。本研究では、利益属性についての国際比較を通じて浮かび上がる企業システムや企業観の差異にフォーカスをあて、そうした会計基準の国際的な差異やそうした差異を解消させる変化が企業行動にどのような影響を与えるかを検証する。 本研究で特に注目するのは、会計基準の国際的統合化・収斂化を契機に、収益費用観から資産負債観へのシフトが明確になる中で、収益費用観が果たしてきた役割と企業行動との関係を明確にすることにある。このため、利益とキャッシュ・フローとのかい離に注目した利益属性としての会計発生高の質や利益平準化指標が企業活動にどのような影響を与えるかを検証するため、まずは投資活動にフォーカスをあて、研究活動を続けてきた。一方で、企業活動の中でも配当行動に与える影響については、すでに過去において検証してきたものを海外学会などで報告することにより、国際的差異の源泉やその影響についても議論してきている。このように、過去の研究成果を海外で発表する一方で、新たな視点の研究活動も続けることができている。また利益観の差異をクリアにするため、企業経理責任者などを対象にしたアンケート調査も実施し、その回収も順調に進めることができた。そうした意味で、研究活動はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究活動の実績、現在までの達成度の中でも説明したとおり、研究活動そのものは順調に進んでいる。とはいえ、いくつか残された課題も存在している。 1つは、利益属性の特徴やその変化が財務制限条項などの資金調達契約にどのような影響を与えており、それが企業にどのような影響を与えているのかという検討である。これについては、研究協力者とともにデータベースを構築するとともに、分析視点の精緻化など進めるべき作業が残っている。 いま1つは、利益属性の変化と税務活動との関係の検討である。これについても、上述した資金調達契約と同様、研究協力者とともにデータベースを構築しつつ、分析視点の精緻化などについて検討する。 さらに平成25年2月に実施したアンケート調査などの解析も進め、本研究全体のフレームワークの提示とそれに基づく分析仮説の提示をさらに深堀していく必要がある。 上述した3つの活動をつづけながら、一方で、国内外での学会や学術誌などへの投稿を通じて、研究活動を推進していくことが平成25年度における活動の焦点となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施した質問調査の集計結果について、調査協力者にフィードバックを行う必要があるが、平成24年度末の調査実施のため、フィードバックできなかった。当該金額はその郵送代などとして活用する予定である。
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Research Products
(5 results)