2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730383
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
木村 晃久 横浜国立大学, 経営学部, 准教授 (80585753)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 財務会計 / 経常利益 / Value Relevance / 利益平準化 / 損益項目のシフト |
Research Abstract |
平成24年度は、研究実施計画に基づき、営業利益、純利益と経常利益の「利益の質」を比較することからはじめてみた。ここでは、「利益の質」の尺度として、「Value Relevance」、「持続性」、「予測能力」の3つを取り上げ、2011年3月決算までのデータを用いて、上述した3つの利益を比較した。結果は、純利益にくらべ、営業利益と経常利益のほうが「Value Relevance」、「持続性」、「予測能力」のすべての点で優れている傾向があるというものであった。いっぽう、営業利益と経常利益については、年度によって結果が異なり、どちらのほうが優れているか、結論づけることができなかった。これらの結果は、先行研究と異なるものではなく、オリジナリティーもないため、論文として公表していない。 つづいて、研究実施計画に基づき、営業外損益(または、営業損益)の区分と特別損益の区分のどちらに開示するか、経営者が選択可能な項目である「シフト可能項目」の開示実態について調査した。その結果、シフト可能項目のうち、「固定資産処分損益」と退職給付会計における「会計基準変更時差異」が特に金額的重要性が高く、かつ、営業外損益(または、営業損益)の区分と特別損益の区分のどちらにも実際に開示されていることが判明した。そこで、本年度は、「固定資産処分損益」をもちいた経常利益の平準化行動によって、経常利益情報の有用性が高まるか否かについて検証をおこなった。結果は、「固定資産処分損益」をもちいた経常利益の平準化行動によって、経常利益情報の有用性は高まるものの、投資家の投資意思決定に影響をあたえるほどの情報価値があるかは疑わしいというものであった。これについては、『横浜経営研究』第33巻第4号(2013年3月)に「固定資産の表示区分操作を利用した利益平準化のValue Relevance」として公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、研究実施計画の内容をほぼ遂行することができたうえ、平成25年度の研究実施計画の一部(具体的には、『横浜経営研究』第33巻第4号(2013年3月)に雑誌論文として公表した「固定資産の表示区分操作を利用した利益平準化のValue Relevance」において検証された内容)を達成することができた。よって、「研究の目的」の達成度としては、おおむね順調に進展しているといってよいであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、まず、平成24年度の調査によって、「シフト可能項目」として特に金額的重要性が高く、かつ、営業外損益の区分と特別損益の区分のどちらにも実際に開示されていることが判明した、退職給付会計の「会計基準変更時差異」について、これを利用した経常利益の平準化行動によって、経常利益情報の有用性が高まるか否かについて検証をおこなうことからはじめる。 これについて検証したあとは、「シフト可能項目」として考えられるが、データの捕捉が上述で検証した項目よりも困難な他の項目(たとえば、棚卸資産の「低価評価損」)について、検証可能なデータとして整理できるか否かを確認したうえで、もし検証可能であると判断されれば、これについて上述と同様の検証をおこなう方向で考えている。 なお、平成25年度の研究実施計画に記載した「経常利益情報の間接的有用性」について、検証可能なモデルが構築できるか、考えてみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年度は、申請当初に購入を予定していた統計ソフトウェアを研究費で購入する必要がなくなったため、約170,000円の繰越が生じた。次年度は、当年度の繰越額も含め、ファイナンス学会(@武蔵大学)と日本会計研究学会(@中部大学)、その他研究会に参加するための旅費、参考文献(書籍を含む)の購入費および複写費、データの記録メディア購入費に研究費を重点的に使用する予定である。
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