2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730392
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (40405147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リスク情報 / 有価証券報告書 / 自然災害 |
Research Abstract |
本研究では、リスク情報の開示状況と企業評価(株価)との関係を実証するとともに、アンケートを用いた実験を行う。リサーチ・デザインを構築するために、先行研究のサーベイを広範かつ、綿密に行う必要がある。 企業が開示するリスク情報に対して2つの考え方が存在する。(1)意思決定理論(the decision theory)と(2)行動リスク理論(the behavioral risk theory)である。(1)では、Froot et al. (1993)やJorgense and Kirschenheiter (2003)などが、アニュアル・リポートに記載されたリスクを、利害関係者はその発生確率とキャッシュ・アウトフローを合理的に判断して意思決定を行っていることを示している。一方で、Rose(2010)は(2)に基づき、それらのモデルでは利害関係者の行動を全て説明することは出来ず、リスク認知にバイアスが存在することを明らかにしている。本研究では、サーベイにおいても、2 つの理論に基づいて書かれた論文を中心に行った。 リスクの種類や開示方法によって、利害関係者のリスク情報に対する意思決定は変化すると考えれれる。経営継続に関するリスク開示のように、リスクへの対応策が具体的、かつ詳細に記載されるケースの場合、その企業のリスク情報を適正に判断し、それを企業評価(株価)に反映していると予想される。一方で、事業等のリスクのように、企業が保有するリスクが列挙されるだけで、具体的な対応策が記載されていない場合、企業評価に織り込まれている可能性は低く、かつテロ、自然災害など発生頻度が低いものについても、企業評価に反映されていないと考えられる。本研究では、有価証券報告書の企業実態をケーススタディを通じて、検証し、その実態を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、先行研究を調べ、研究の大枠を形成することにある。その意味で概ね研究は順調に推移したと言える。今後は、企業評価とリスク情報の実証やアンケートを用いた実験を通じて、リスク情報の実態を検証していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2つの方向性で研究を行っていく予定である。 (1)企業評価とリスク情報の実証 リスク情報開示が情報価値を有しているかを検証する。仮に開示が充実している企業の価値が高ければ、市場が正しい評価をしていることになる。しかしながら、現在の開示実態から、利害関係者が全てのリスク情報を合理的に判断しているとは考えにくい。そのため、どういった情報が情報価値を有しているのかを検証する。サンプルは、東証一部上場のものを用い、期間は、リスク情報の開示が広がった2004年度以降のものを用いる。 (2)アンケートを用いた実験 Rose et al.(2010)では、有価証券報告書におけるリスク認知のバイアスを、MBA取得者などの専門家に対するアンケートを通じて明らかにしている。具体的には、擬似的な有価証券報告書を作成し、その中に含まれているリスクをどのように判断し、意思決定を出来るかどうかをアンケート調査を通じて検証する。調査モデルに当たっては、Rose et al.(2010)などのリスク認知に関する質問項目に準じつつ、さらに独自の項目を追加すること考えている。アンケートは、日本の大学生、社会人を対象に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度については、主に研究会への参加やインタビュー、アンケートの調査項目の作成に要する費用を、研究費で賄う予定である。本研究では、国際比較についても行う可能性を探るためにヨーロッパやアメリカの学会に参加し、情報収集を行う考えである。また書籍を購入することにも研究費を使う予定である。本学の図書館・データベースは比較的充実しているが、時に入手が出来ない論文や文献がある。そうした文献を収集する。またデータ整理には学生アルバイトなどの協力が必要のため、それに必要な費用も当研究費で賄う予定である。
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