2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730392
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (40405147)
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Keywords | 公認会計士 / アクチュアリー / 退職給付 / リスクコミュニケーション |
Research Abstract |
今年度に焦点を当てたのは、リスクコミュニケーションである。その事例として、アクチュアリーと公認会計士の関係を取り上げた。現在は企業会計上において、諸仮定とモデルに基づいた見積り値によって作成された情報は珍しくなくなった。退職給付債務などはその典型的な例として挙げられよう。退職給付に関する見積り値は、アクチュアリーにより作成されている。そして、彼ら/彼女らが作成した見積り値を、財務諸表上は監査というプロセスを経て信頼性を保証する。しかしながら、アクチュアリーは会計の専門家ではなく、公認会計士も数理的な見積りを行う専門家ではない。そのため、お互いにインフォーマル、フォーマルな形での話し合いを行い、双方の立場や手法に関して理解を深めることが欠かせない。今回は、オーストラリアにおけるアクチュアリーと公認会計士との連携の事例をインタビューを通じて調査した。その結果、日本と比較して業界間での連携が密接に取られており、さらに国際的な機関に対する意見発信についても共同で行っていることが分かった。 こうしたプロセスは決して目に見えるものではなく、その成果を確認することは難しい。しかし、数値に現れなくても密接な連携というプロセスを経た結果は一定の信頼性が担保されており、社会的に大きな意味を持つ。オーストラリアにおける事例は、他の領域におけるリスク評価・管理においても参考とすべきであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リスクに関する下地の調査はある程度できているものの、アンケートなどの実際の分析に必要となる情報を収集できていない。今年度は実験を行うためのデータを収集し、分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年は、もう一度リスク情報の有用性には何が必要なのかという原点に立ち返って、結果を取りまとめて行きたいと考えている。リスク情報の有用性として必要と考えられるのは、現状では、以下の3つの点である。 (1)情報を作成する上でのプロセス、(2)情報の発信形式(定量的な情報か、それとも定性的な情報か)、(3)IRも含めた有価証券報告書以外の情報の役割(相互補完的に使う情報の役割)こうした点とは別にリスク認知の問題についても着目する必要がある。経営者側はリスク(ネガティブな)情報を楽観的に、利用者側はリスク情報をさらに悲観的に捉えがちであり、非対称性が存在していると考えられるからである。 こうした点を考慮しつつ、時間や予算的な制約もあるが、出来る限り包括的な視点で研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力のために招聘予定の研究者の都合が合わず次年度になったこと、またデータ収集を昨年度行わなかったため、その分の費用が繰り越されることになった。 今年度は上記のことに費用を使う予定である。
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