2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
福島 一矩 西南学院大学, 商学部, 准教授 (50548881)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マネジメント・コントロール / 企業成長 / 組織能力 |
Research Abstract |
平成24年度は企業の成長とマネジメント・コントロールの変化の検討にむけた研究フレームワークの考察を行い,報告を2回行った。これまでの研究では,本研究目的を達成するためのフレームワークとしてはいくつかの課題があることを文献レビューを通じて明らかにした。第1に,組織成長を組織規模の拡大と捉える議論では,組織は一方向的に成長を続けるというモデルを想定しており,その仮定が必ずしも現実を反映していない可能性がある。第2に,組織規模に基づく研究の限界を克服するために用いられた組織ライフサイクル概念については,組織ライフサイクルのステージ間の相違が明らかにされつつも,ステージ間の移行・移動に対するマネジメント・コントロールの役割が十分に示すことができない。 このような課題克服にむけて,2つの組織能力の存在を仮定した研究フレームワークを提示した。すなわち,組織が成長を続けていく際に必要となるイノベーティブネスや組織学習に係わるいわゆる組織能力と,ある状況においてどのようなマネジメント・コントロールを選択し,どのように利用することで組織に好影響を与えられるかを判断するマネジメント・コントロールの活用能力である。これらの能力により,現状を円滑に動かすことに加えて,組織ライフサイクル概念で言うところのステージ間の移行・移動を望ましい方向に導くことが可能になるというフレームワークを示した。 本研究で提示したマネジメント・コントロールの活用能力という視点は,組織成長に対するマネジメント・コントロールの役割を示すうえで重要な概念であると考えられる。さらに,環境,戦略といったコンテクスト要因とのフィットを実現できている組織とそうでない組織の差がどこにあるのかを説明する概念としても用いることができる可能性もあり,管理会計研究において有用な概念であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の当初計画では,スタートアップ企業におけるマネジメント・コントロールの郵送質問票調査を終えて分析に入ることを予定していた。この計画では,既存研究の研究フレームワークをおおむね援用した形で実施していくことを予定していたが,その前段階として既存の研究フレームワークの妥当性の検討に時間を要してしまったことが原因であると考えている。 しかしながら,この検討により,当初予定していた研究フレームワークでは十分に明らかにできなかったであろう課題があることも判明し,さらにその課題を克服した形での調査を行える形になったことは結果的には最終的な研究成果という観点かはら望ましいことであったとも判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
既存研究のレビューを通じて新たに提示した研究フレームワークに基づく郵送質問票調査ならびに実証分析を行うことが平成25年度以降の課題である。具体的に取り組むべき課題としては,まず,研究フレームワークで新たに提示した概念の操作化および測定である。特に,マネジメント・コントロールの活用能力という新たな概念については,既存研究で直接の利用が可能な変数が存在しているわけではなく,情報システムなどの議論を参照しながら変数を作成していく必要があるだろう。 つぎに,郵送質問票調査に基づく実証分析である。平成25年度にはより明確にマネジメント・コントロールの活用能力の存在を示せるであろう,上場前企業および新興市場上場企業に対する郵送質問票調査を行うことで,活用能力の差があることを明確に示すことで,それが組織成長に対して果たす役割を明確にできると考えている。 そのうえで,東証一部上場企業などの既存市場企業に対する郵送質問票調査を行い,新興市場上場企業との差を明らかにすることで,組織成長に対するマネジメント・コントロールの活用能力の果たす役割の大きさを実証的に明らかにし,企業成長とマネジメント・コントロールの変化を体系的に明らかにいていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,平成24年度に実施する予定であった郵送質問票調査を実施する計画予定である。その際に必要となる調査費用に要する費用が平成25年度の主な支出である。具体的には,質問票作成に際して,その妥当性を高めるための企業訪問調査に加えて,研究会等での報告のための旅費に加えて,質問票の印刷,送付,回収等である。特に上場前企業については,十分なデータを確保することが難しく,データベースを構築している企業等からデータを購入する必要があり,そのための費用が大きくなる可能性もある。 ほかには,本分析結果の学会等での報告に向けた準備ならびに旅費等も支出する予定である。具体的には,学会,研究会等での報告のための旅費に加えて,国外学会での報告を行う際には英文の校正等も必要となるため,その分の支出が予想される。
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