2015 Fiscal Year Annual Research Report
津波被災地における地域社会の復興と被災者の生活再建のあり方をめぐる社会学的研究
Project/Area Number |
24730409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
定池 祐季 東京大学, 大学院情報学環, 特任助教 (40587424)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 災害文化 / 災害伝承 / 追悼 / 奥尻島 / 津波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画を変更し、資料調査に加え、奥尻町内の追悼式への参与観察とキーパーソンへのインタビューにより、被災者の生活再建過程と災害伝承の変容を明らかにすることを試みた。2013年の災害20年以降は取材が激減し、通常通り追悼行事が行われるようになった。その一方で、報道が激減することにより、災害伝承のためには一層の努力が必要とされる状況になった。また、災害から20年以上経過し、遺族の高齢化や施設の老朽化などに伴い、追悼行事のあり方に変化が見られる。災害伝承は、主に学校での防災教育(災害発生日である7月12日周辺の避難訓練と関連学習)と、語り部による島内外への発信が中心となっていた。これらの成果は、東日本大震災被災地での情報提供や、行政・一般向け講演などで発信をした。今後学会発表なども検討している。 奥尻町との比較のために、沖縄県の過去の津波被災地を対象とした文献調査と現地調査を実施し、災害伝承と災害文化の変容過程を明らかにした。その成果は地域安全学会・災害情報学会にて発表した。加えて、北海道内の他の災害事例との比較のために有珠山周辺地域で調査を実施し、噴火過程における災害遺構保存のプロセスについて明らかにした。その成果は日本災害復興学会誌『復興』第13号に寄稿論文として発表した。 北海道南西沖地震から20年以上経過し、最大の被災地となった奥尻島の人々の被災体験や復興体験は潜在化しつつある。行政の追悼行事が20年で終了し、行政としてこれまで積極的な災害伝承の試みはなされてこなかった。行政、あるいはコミュニティとして災害経験の定位・共有・発信が十分になされていないため、東日本大震災を機に、復興過程に批判的な報道にさらされ、人々は精神的な「被災」に見舞われた様子がうかがえる。今後も引き続き、奥尻島の災害伝承と災害文化のあり方について調査研究を進めていく。
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