2012 Fiscal Year Research-status Report
高校生と母親の意識からみた教育機会の社会経済的格差生成メカニズムの解明
Project/Area Number |
24730417
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 翔 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (60609676)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育機会 / 社会移動 / 高校生 / 親子データ / 相対的リスク回避 / 合理的行為論 |
Research Abstract |
2012年度は、(1)高校生と母親に対する全国調査と(2)そのデータのクリーニング・コーディング及び(3)研究成果の報告と論文の執筆を行った。まず,全国調査については,調査会社のモニタとなる高校生とその母親を対象とした郵送調査から、高校生と母親から7割近い有効回答を得た(有効回収率68.6%).(2)データ納品後は,データのクリーニングや学校名・学科名などのコーディングを行い,単純集計表を作成した.また(3)得られたデータを用いて,研究成果の報告を数理社会学会にて行った.そこでは,Breen and Goldthorpe(1997)の提唱する相対的リスク回避仮説を検証するための計量モデルを,主に高校,専門学校,短大,四大に対する高校生の評価を用いて構築した.具体的には,各学歴に対する満足度をどのような特徴(主観的成功確率,主観的コスト,社会的地位,相対的リスク回避,職業との対応)が説明するのかをマルチレベルモデルによって検討した.また,満足度も含めたこれら評価が実際の進路志望に対して与える影響を,条件付きロジットモデルから検討した.同時に,各職業(専門・技術,管理,事務,販売,サービス,生産現場・技能,運輸,保安)に対する高校生の評価を用いて,各職業に対する満足度が,職業に対する他の評価(難易度,社会的評価,生活水準維持)とどのような関連にあるのかをマルチレベル分析で検討した.そして満足度を含めた各職業に対する評価が,職業希望とどのように結びついているのかを条件付きロジットモデルから検討した.このような作業を通じて,相対的リスク回避仮説が高校生の進路選択を説明する上で有効であることを実証した.また高校生の職業希望と教育期待を結びつけることにより相対提起リスク回避を直接検討する研究や数理社会学会の内容を発展させた研究を論文としてまとめ,国際学会に提出しアクセプトされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高校生と母親に対する郵送調査からは、2002年と同等かそれ以上の水準のデータを得ることが可能となった。特に2002年の調査では得られなかった、子どもの職業アスピレーションや希望先の学校名、詳細な家庭背景、親の学校情報といった多くの貴重な情報を得ることが可能となり,教育に関する格差・不平等を考える上での重要なデータが収集出来た。また、回収率も2002年のものと大差なく、70%近くになった。 また分析計画について十分検討し,仮説検証型の調査を行ったため,データの納品後は英語論文2本(国際会議にアクセプト済み,American Sociological AssociationとInternational Sociological Association RC28)と国内学会1本(数理社会学会)という成果をあげることができた。これらの研究報告は,教育機会の不平等が生じるメカニズムを説明する上で,Breen and Goldthorpeの相対的リスク回避仮説が一定の説明力をもつことを一次データで示した日本で初めての研究であり,このような成果を初年度に得ることができたのは大きな達成といえる.このように成果が計画以上に進展することにより,次年度から十分な時間をかけてさらに詳細に仮説の妥当性を検討することが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
具体的には3つの課題を設ける.(1)相対的リスク回避仮説の検証に関する学術論文の執筆.前年度の学会報告や今年度の国際学会報告のコメントを受け,学術論文(英語)を執筆する.これにより,日本における知見を海外にも提示することによって,国際的な貢献を果たす. (2)高等教育の拡大が教育選択の格差・不平等に与える影響の検証.これは2002年のデータと2012年のデータを用いて,進学率が上昇した10年の間に,高校生の進路志望の社会経済的格差がどのように変化したのか,またそのような中,学校トラックの影響はどのように変化したのかを明らかにするものである.これについては国内の学会で報告する予定である. (3)計量テキスト分析を用いた意識構造の解明.「なんとなく進学する」ことについての高校生と母親の自由回答に対して,計量テキスト分析によって抽出された意識の類型に対して,社会経済的背景や学校がどのように結びついているのかを検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] The ISA RC28 Winter Meeting2013
Author(s)
Sho Fujihara
Organizer
An Empirical Test of the Breen-Goldthorpe Model of Educational Decision: Class Origins, Subjective Evaluations, and Educational Expectations of Japanese Students
Place of Presentation
The University of Queensland (Brisbane, Australia)
Year and Date
20130716-20130719
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