2013 Fiscal Year Research-status Report
高校生と母親の意識からみた教育機会の社会経済的格差生成メカニズムの解明
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24730417
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 翔 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60609676)
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Keywords | 教育機会 / 職業期待 / 教育期待 / 相対的リスク回避 / 高校生 |
Research Abstract |
2013年度は,2012年度に得られたデータの分析を行った.具体的は(1)教育期待の規定要因の分析,(2)職業期待の規定要因の分析,(3)教育期待と職業期待の連関の3つについて研究を進めた.(1)に関しては,条件付きロジットモデルから,Breen and Goldthorpeの教育選択のモデルが日本の高校生の教育期待についても説明可能かどうかを分析した.条件付きロジットモデルを用いた分析からは,主観的成功確率,学歴の社会的地位の高さ,相対的リスク回避が高校生の教育期待の差異をいくらか説明することが示された.しかし,ロジットモデルのような非線形モデルの媒介効果を推定するKHB法を用いた分析からは,これらの変数が高校生の社会経済的背景が教育期待に与える影響を媒介する割合が小さいことが明らかになった.このことから,Breen and Goldthorpeのモデルは教育期待の差異を説明はするが,社会経済的効果が教育期待に影響を与えるプロセスについては弱い説明力しか持たないことが明らかになった. (2)に関しても,個人特性変数だけではなく,高校生が各職業にどのような評価をしているのかについての選択肢特性変数を組み込んだ条件付きロジットモデルから,高校生の職業期待に影響を与える要因を検討した.分析の結果,教育期待の時と同様に,主観的成功確率,職業の社会的地位の高さ,相対的リスク回避は職業期待の差異を説明する上では有効な変数ではあるが,社会経済的背景が職業期待に与える影響をほとんど媒介していないことが示された. (3)については,教育期待と職業期待には強い関連があること,また職業期待を媒介として社会経済的地位は教育期待に影響を与えることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
十分に計画された調査を実施することにより,教育期待の形成要因だけではなく,職業期待の形成要因,そして教育期待と職業期待の関連についても検討し,成果をまとめることが可能となった.研究成果は関西社会学会および国際社会学会の社会階層部門(ISA RC28)そしてアメリカ社会学会(ASA)で報告を行った.アジアにおけるBreen and Goldthorpe仮説の直接的な検証はほとんどなく,国際的貢献を果たすことができた. 以上のような研究成果の報告に対するコメントを受け,現在は著書,日本語での論文,および英語論文を執筆している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も高校生の教育期待と職業期待がどのように形成されているのかを中心に検討を行う.特に本調査では母親についても同様の質問をしており,高校生についての分析結果と母親についての分析結果を比較することを計画している.また,高校生の教育期待については大学のランクや学部・学科についての情報も得ている.これらの情報のクリーニング・コーディングを行い,多様な教育期待を変数として分析し,それと社会経済的背景や親の意識や教育投資の関連を明らかにする. また,当初の計画通り,2002年から2012年の間に生じた大学進学率の上昇に伴い,高校生と母親の教育意識にどのような変化が生じたのか,またそれは社会経済的背景とどのように関連しているのについて検討を行い,教育に関する格差や不平等が生じるメカニズムを明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額のため次年度に繰り越した. 統計調査方法に関する書籍に利用する予定である.
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