2012 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化にともなうアジア系女性の人種認識・表象の再編成
Project/Area Number |
24730420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高谷 幸 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40534433)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アジア系女性 / 人種認識 |
Research Abstract |
本研究は、グローバル化にともなう消費社会が展開されているアジアにおいて、アジア系女性をめぐる人種認識・表象がどのように再編成されているのかを考察する。具体的には、以下の2つの問いを明らかにする。 (1)人びとの日常生活における他者や自己にかんする人種認識のプロセス、化粧品の消費実践に着目することで、「アジア系女性」内部の差異化と序列化がいかに構築されているのかを考察する。(2)人びとの人種認識に影響を与えるものとして消費文化における人種表象に着目する。すなわち化粧品の広告分析を通じ、グローバル化にともなうアジア系女性の表象の差異と変容を考察する。 以上のように、日常生活における人種認識のプロセスおよび化粧品の消費実践、化粧品の広告戦略を考察することを通じ、グローバリゼーションにともなうアジア系女性内部での差異化・序列化の論理と過程を明らかにする。 初年度である本年度は、関連文献の収集分析をつうじて本研究の問題設定をより明確化すると同時に、日常生活・化粧品消費の場における人種認識について日本およびシンガポールで調査を行った。具体的には、シンガポールにおいて、主にフィリピン人移住女性および現地在住日本人女性を対象にした聞き取り調査、化粧品企業の広告・資料収集などを行った。また日本ではアジア系女性の美をめぐるイメージが、主に韓国ポピュラー・カルチャーやコスメに大きく関係する形で構築されていることにかんがみ、韓国コスメのブロガー・消費者に聞き取り調査を行った。 さらに、資生堂企業資料館や国立国会図書館等で、アジアにおける化粧品企業、特に美白商品の展開についての資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新しい研究課題に着手した初年度だったため、関連文献の収集分析にやや時間を要した。また日本におけるインタビュー対象者の最初の設定が曖昧だったため、その限定に時間を要した。しかし研究をすすめながら、それらの課題は克服し得たので、今後は計画を予定通り実施することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究をすすめる過程で、日本におけるアジア系女性の美のイメージの構築に、韓国ポピュラー・カルチャーおよび韓国コスメの消費が大きな影響を与えていることがわかった。それを踏まえて、当初は、日常生活における人種認識についてのインタビュー対象者を日本人女性としか限定していなかったが、そのなかでも韓国ポピュラー・カルチャーおよび韓国コスメの消費者に焦点を絞ってインタビューを開始した。2013年度もこのインタビューを継続して実施し、日本のなかでアジア系女性についての美のイメージが、人種をめぐる認識、ナショナル・アイデンティティと結びつきながらどのように構築されているのかを明らかにする。 またシンガポールにおいては、前年度同様、フィリピン人女性を対象に化粧品消費についての聞き取り調査を行なう。前年度の調査で、移住女性にとって「美白」は移動と結びついているという仮説が得られたため、今年度はフィリピンにおいても帰国した移住女性やその家族についての調査を実施する予定である。 さらに企業の広告分析については、資生堂企業資料館における資料収集の過程で、アジア地域に特化した広告戦略を現段階では特に実施していないことがわかった。したがって資料収集は、雑誌および店舗という需要サイドで行なう必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は主に以下の研究に研究費を使用する予定である。 第一に、韓国コスメおよび韓国ポピュラー・カルチャーの消費者を対象にしたインタビュー調査。主な対象者は韓国コスメや韓国ポピュラー・カルチャーについてのブログを開設していたり、韓国語学習者であり、韓国に住んでいる者も含まれため、ソウルでも聞き取りを行なう予定である。 第二に、シンガポールおよびフィリピンで、とくにフィリピン人を対象にした化粧品の消費行動についての聞き取り調査・参与観察、関連広告や資料の収集分析を行なう。
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