2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730443
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
佐野 麻由子 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (00585416)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 男児選好 / 市場化 / 準市場化 / ネパール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「市場化・準市場化が家父長制的男児選好を加速させている」という仮説のもと、2006年の政変後の「失われた女性たち(男児選好、少女売買、女児の育児放棄)」の促進要因を社会調査の手法を用いて実証的に明らかにすることにある。 最終年度である本年は、前年度に実施した調査のデータを分析し、仮説の検証を行い、促進要因についての見解を提示した。分析の結果からは、市場化・準市場化が、収入(経済資本)や土地、学歴(人的資本)、困ったときに頼れる家族以外の人(社会関係資本)をもたない人の男児選好を促進することが検証された。さらに、後述する重要な知見が得られた。すなわち、他の世帯と比較して生活水準が下位にあると感じる人、過去と比較して世帯の経済状況が上向いた人、生活水準を改善する機会が十分にあると思う人ほど、男児選好的である。上述の知見より、「階層の上昇移動を経験した人ほど、当該社会において優勢な生存維持戦略(男児への投資)をとる」、逆に、「下降を経験した人、長期的に上昇の機会を得られていない人ほど男児選好的にならない」という新たな仮説を導出するに至った。これらの調査結果は、先行研究に対し、「資源の多寡」だけではなく、他者との生活水準の比較による剥奪感、過去と現在の生活水準の比較による上昇感が、男児選好の促進要因であるという視点を提示するものであった。 以上の研究成果は、2014年7月13日のRC06 (Committee on Family Research) programme of XVIII ISA (International Sociological Association)World Congress of Sociologyでの口頭報告、および、2015年2月に刊行された福岡県立大学人間社会学部紀要第23巻第2号掲載の論文で発表された。
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