2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730446
|
Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
五十川 飛暁 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (00508351)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 地域開発 / 社会の再生産 / 生活の必要 / 地域空間の重層性 / 地域空間の可変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域社会の持続性を担保しうるような開発の条件を検討することによって、従来の「上意下達の開発論」に対する「下からの開発論」を展開することをその課題としてきた。その遂行にあたり、まず初年度には、現場にかかわる住民たちが共通してもっている判断基準として「生活の必要」があることを見いだし、研究をすすめるうえでの基本的視点に据えた。そのうえで、2年目以降、資料収集や地元の人びとへの聞き取りを重ねるなかから具体的な検討を試行してきた。最終年度である本年は、開発の対象となってきたような地域空間に対して住民たちがどのように付きあってきたのかをあらためて住民たちの目線(=生活の必要)から捉えかえすことによって、地域空間の「場所の性格」を明らかにすることを試みた。主に注目したのはこれまでしばしば開発の対象となってきた水辺の地域空間である。その利用のあり方の実態からは、水辺の空間は住民たちにとって通時的にも共時的にもたいへん重層的な存在であるということが分かってきた。現在、地域空間の公共性をめぐる政策的な議論においては、公・共・私のうちの共を拡大していく方向性での模索が主となっている。けれども、現場の人びとにとってみれば、公・共・私は折り重なって存在しているような性格のものであった。しかも、公・共・私のどの色にも塗られうるという可変性がそのような空間を特徴づけていた。となれば、公・共・私のそれぞれを独立させてその置き換えを考える従来の開発論だけでなく、それらの重層性や可変性にポイントをおいた政策の可能性を考えておくことも必要であるし有用となる。それらの知見をもとにした文章化を、現在、進めている。
|