2012 Fiscal Year Research-status Report
貧困問題に対する諸専門領域の相互作用と社会的レジリエンス創発に関する社会学的研究
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24730448
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
西川 知亨 大阪産業大学, 教養部, 講師 (50582920)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会学 / 貧困 / 社会的レジリエンス / 人間生態学 / 総合的社会認識 / シカゴ学派 / 社会的反作用 / 社会病理学 |
Research Abstract |
本研究で必要となる理論的視座(シカゴ学派総合的社会認識)の整備とともに、専門領域ごとの「理論運動」(disciplinary movement)とその持続可能性を明らかにすることを目指した。シカゴ学派の文献の検討に加えて、日本国内において、「反貧困」「派遣村」活動のみならず、さまざまな貧困問題と対峙する団体や活動を対象にし、総合的社会認識の方法論における質的方法を中心にして、種々の観点から調査した。比較検討のため、米国におけるコミュニティの組織化にかかわる団体からの聞きとりもおこなった。その結果、主に明らかになったのは次のとおりである。 第1に、本研究の方法論・理論的視座としての、シカゴ学派の貧困観の様相である。わけても、<初期シカゴ学派の社会学者は、グローバル化の原初形態の流動的な社会状況における経済的・関係的貧困について、「組織化」の展望を持ちながら、生態学的・総合的に描き出すことを目指した>ことを明らかにし、現代日本における貧困対抗活動研究の一つの方向性を示した。 第2に、日本国内において貧困問題に対抗する活動系は、理念型として、①「ネットワーク」系、②「草の根」・連帯経済系、③「グリーン」系、④「ソーシャル」系に、分類可能であることを指摘した。この分類は、「活動のスタンスにかかわる凝離と協同」、「活動の持続可能性と自己の位置づけ・理論運動の過程」「社会的反作用の展開過程という学説史的意義」といった示唆を有している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で必要となる理論的視座、つまりシカゴ学派の人間生態学や総合的社会認識の方法論の整備、および専門領域ごとの「理論運動」(disciplinary movement)とその持続可能性の研究の成果は、国内外の学会および研究会で発表し、レビューを受ける段階にまで至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
専門家間の協同/非協同体制および支援対象者との相互作用過程の研究をおこなう。調査対象となる活動現場において、前年度で焦点化した各専門領域にとどまらず、「相互作用過程」に焦点を合わせた研究をすすめる。そのために、単なる「ボランティア」同士の相互作用という観点ではなくて、諸専門領域の相互作用という観点から、活動の場を参与観察、非構造化インタビューの方法で試みる。その際、異なる領域ごとに構成されている論理≒生態学的秩序が、時間・空間の両側面が絡み合う形で(初期シカゴ学派の生態学観にもとづく総合的社会認識)、拡大・縮小・(意味秩序が)変容していく様子に焦点を合わせて、次年度の理論化の作業への方向付けを図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費、及び、翌年度以降に請求する研究費については、主に次にかかる費用を勘案した結果である。 第1に、シカゴ社会学を修正・媒介した日本発の社会的レジリエンス論を深めるための国内外のフィールド調査にかかる費用である。 第2に、国内外に向けて発信していく費用が必要となる。これまで、国内のみならず、「米国・欧州・アジア」を意識した国際発信を試み、ネットワークを構築してきた。今後、ネットワークを増強し活かしていくための費用が必要となってくる。 第3に、本研究のひとつの特徴でもある社会学史からの方法論整備のための国内外の文献収集も進めていく。
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