2013 Fiscal Year Research-status Report
貧困問題に対する諸専門領域の相互作用と社会的レジリエンス創発に関する社会学的研究
Project/Area Number |
24730448
|
Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
西川 知亨 大阪産業大学, 教養部, 講師 (50582920)
|
Keywords | 社会学 / 貧困 / 社会的レジリエンス / 社会生態学 / 総合的社会認識 / シカゴ学派 / 社会的反作用 / 社会病理学 |
Research Abstract |
前年に引き続いて、現在の日本社会において喫緊の課題となっているいくつかの社会病理現象のなかでも、貧困問題を中心にして、そこから専門家/非専門家たちによる社会的反作用の諸力により個人的および社会的レジリエンスを生む様相について理論的・学説的かつ実証的に考察をおこなった。とくに当該年度は、前年度までに調査を進めた日本全国における貧困対抗活動を、近畿圏の活動と比較し、支援団体に協力しながら調査を進めるという形をとった。研究内容および調査分析結果の一部を一般市民、および各メディア関係者を前にして発表する機会もあった。 研究成果としては、大きく分けて、欧州の研究者を対象にした発表と、アジア諸国の研究者を対象にした発表に分けられる。欧州の研究者を対象にした発表としては、チェコ国のプラハに本部を構えるThe International Institute of Social and Economic Sciences(IISES)学会の大会(プラハ開催)にて、日本の貧困に対抗する活動がボランティアベースかビジネスベースかによって、社会的レジリエンス評価が変わってくるという趣旨の報告をおこなった。欧州の研究者と交流し、日本社会の病理現象と社会活動について意見交換をする機会を得た。また、今年度より、当学会の学会誌IJoSS 編集顧問委員(Editorial Advisory Board)を務めている。アジア諸国の研究者を対象とした発表としては、2014年に、初めて日本で開催されるInternational Sociological Association(ISA)学会大会の前哨戦である「ISA横浜大会プレイベントII 国際ミニコンファレンス「アジアの社会学者との対話」」で、日本側からの若手代表として、日本社会における貧困対抗活動の生態系にかんする報告をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究から得た貧困対抗活動の生態系分類である①「ネットワーク」系、②「草の根」・連帯経済系、③「グリーン/アース」系、④「ソーシャル」系のインプリケーションについて、国内外(日本、アジア諸国、欧州)の研究者を前にして発表する段階にまで到達しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
異なる領域ごとに構成されている論理≒生態学的秩序が、時間・空間の両側面が絡み合う形で(初期シカゴ学派の生態学観にもとづく総合的社会認識)、拡大・縮小・(意味秩序が)変容していく様子に焦点を合わせて、今年度までに収集したデータを参照しながら、補足的な調査をおこないつつ、理論化を進めていく。具体的には、社会病理現象に対抗する団体(とくに「シングルマザー」および子どもの貧困に対抗する団体がおこなっている活動と調査)に協力しながら諸データを得る。社会生態学的な時間と空間の圧縮現象に焦点をあわせ、現在のいわゆる「社会的弱者」がいかなる社会的背景のもとで「生きづらさ」を経験しているのかを、社会生態学的に明らかにする。つまり、近年の「ライフストーリー論」のような局域的な分析ではなく、生活史と社会的背景がどのように折り合わされていくかどうかを明らかにする。この視点は言うまでもなく、シカゴ学派(修正)社会生態学である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遠隔地よりも近畿圏での調査の必要性が、当初の予定よりも多く生じたことと、今後、社会的相互作用データ収集および理論化のための文献・映像資料の購入に費用を充てる必要が発生したため。 第1に、本研究のひとつの特徴でもある社会学史からの方法論整備に加え、理論化のための国内外の文献・資料収集も進めていく。最終年度である本年度は、この作業にとくに重点が置かれる。第2に、シカゴ社会学を修正・媒介した日本発の社会的レジリエンス論を深めるための国内外のフィールド調査にかかる費用である。第3に、国内外に向けて発信していく費用が必要となる。これまで、国内のみならず、「米国・欧州・アジア」を意識した国際発信を試み、ネットワークを構築してきた。今後も、ネットワークを活かしていくための費用が必要となってくる。
|