2014 Fiscal Year Research-status Report
貧困問題に対する諸専門領域の相互作用と社会的レジリエンス創発に関する社会学的研究
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24730448
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
西川 知亨 大阪産業大学, 教養部, 准教授 (50582920)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 貧困 / 社会的レジリエンス / 社会生態学 / 総合的社会認識 / シカゴ学派 / 社会的反作用 / 社会病理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に引き続いて平成26年度においても、現在の日本社会における社会病理現象のなかでも貧困問題を中心として、専門家/非専門家たちによる社会的反作用の諸力によって生み出される個人的および社会的レジリエンスを生む様相について、理論的・学説史的・実証的な考察を進めた。そのなかで、平成25年度における国際会議(学会報告)、および一般向けの報告などのなかで出てきた論点・問題点などを踏まえ、かつ、諸活動とレジリエンス創発の背景にある「近代化と現代化」の作用についての考察を行いながら、貧困対抗活動の各系統の性質の整理を行うことを試みた。 貧困対抗活動における①ネットワーク系(当事者近接・ボランティア志向)に関しては、個人的/社会的レジリエンスの創出について、例えば、「相談者の生活の組織化」や「人々の社会意識の変容」が挙げられる。②草の根連帯経済系(当事者近接・事業志向)に関しては、個人的/社会的レジリエンスの創出について、例えば、「当事者活動家の文化的生活の組織化」や「草の根からの持続的な活動システム構築提示」が挙げられる。③グリーン/アース系(当事者遠隔・ボランティア志向)に関しては、個人的/社会的レジリエンスの創出について、例えば、「人材育成」や「海外の貧困派生問題の議題設定機能(アジェンダセッティング)」が挙げられる。④ソーシャル系(当事者遠隔・事業志向)に関しては、個人的/社会的レジリエンスの創出について、例えば、「自己実現」や「新しい社会システム構築提示」が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で得た実証的データは、文献・映像などのドキュメント資料での裏付け(triangulation)を進めることが求められると考えられるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したデータを参照しながら、補足的な調査を行いつつ、理論化を進める。① ネットワーク系(当事者近接・ボランティア志向),② 草の根連帯経済系(当事者近接・事業志向),③ グリーン/アース系(当事者遠隔・ボランティア志向),④ ソーシャル系(当事者遠隔・事業志向)の各系統が、個人の生活や社会の仕組みを柔軟に再組織化していく力について、社会生態学的に評価することを試みる。そこから、それぞれの活動の顕在的/潜在的社会的意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
いわゆる反貧困活動(ネットワーク系)だけでなく、貧困対抗活動の生態系に問題を再設定した結果、重点を置いて着目する活動が変化したため、当初の予想・予定に比して、遠隔地よりも近畿圏の調査の必要性が多く生じたことが、未使用額発生の状況として、挙げられる。また、ネットワーク作りを、遠隔地ではなく近畿圏においておこなってきたことも挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、社会的相互作用のデータ収集および理論化のために、様々な機関・団体が発行している文献・映像資料の購入が必要となってくる。これまで、日本国内に加え、「米国・欧州・アジア」を意識した国際発信を試みてきたが、今年度に構築したネットワークも含め、これまでのネットワークを活かしていくための諸費用にも充てることとしたい。
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