2013 Fiscal Year Annual Research Report
「障害の社会モデル」再考―容貌のインペアメントのある人々の観点から
Project/Area Number |
24730451
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西倉 実季 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (20573611)
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Keywords | 障害の社会モデル / 容貌 / ディスアビリティ / インペアメント |
Research Abstract |
本研究の目的は、たとえば顔にあざや傷痕があるなど、容貌の障害のある人びとの困難経験をふまえて「障害の社会モデル」(以下、「社会モデル」)を批判的に検討することである。本年度は、前年度に実施した障害学における主要文献の精査、および容貌の障害のある人びとへのインタビュー調査の結果をもとに、社会モデルの理論的検討を試みた。 ディスアビリティ(障害者の社会的不利)の原因をインペアメント(心身の医学的特徴)に還元する医学モデルを批判する社会モデルは、インペアメントに対する社会的障壁こそがディスアビリティを帰結するという因果関係を説明する。こうした転換は画期的ではあるが、社会構造的な障壁によってもたらされるディスアビリティにその射程を限定してきた点で問題を残している。このような射程のもとでは、外部から課される行動の制約といったディスアビリティは扱えても、「心理的・情緒的な福利」(C. トーマス)に関わるディスアビリティを把握することはできない。従来の社会モデルは、心理的・情緒的な次元のディスアビリティを私的・個人的な問題として看過してきたため、障害者が直面しているディスアビリティを包括的に捉えることができなかったのである。 そして、容貌の障害のある人びとに対するインタビュー調査でおもに語られたのは、まさにこの心理的・情緒的な福利に関わるディスアビリティであった。彼/彼女たちが日常的に経験しているのは、物理的バリアや法制度の不備といった社会構造的な障壁によるディスアビリティではない。それは、身体的差異に対する社会的意味づけによって否定的感情が引き起こされるというディスアビリティである。このような心理的・情緒的次元のディスアビリティを私的・個人的な問題として切り捨てないためには、従来の社会モデルにおける公私二元論を再考する必要がある。
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Research Products
(6 results)