2012 Fiscal Year Research-status Report
<自立>を志向する障害者とケアワーカーの相互行為に関する調査・実証研究
Project/Area Number |
24730455
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
前田 拓也 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (60552148)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 障害者 / ケア / 介助 / 自立生活 / フィールドワーク |
Research Abstract |
本研究は、福祉社会学の立場から、障害者と障害者をケアする者との相互行為プロセスに注目し、両者のあいだで「自立した生活」がいかにして協同的に達成されるかを、実証的に明らかにすることを目的としている。 「自立した生活」の支援者と障害当事者間の“相互行為”を分析の対象とする本研究は、①フィールドワーク(参与観察/聞き取り調査)によって現場の実践を明らかにするミクロな研究と、②現場を取り巻く現代社会の論理の変化や財政などの動きを追うマクロな研究、③障害者運動の現代史研究、という 3 つのアプローチを採用し、広範的に検証することを通じて、「障害者自立支援」というイシューに対する明確な政策的提言をおこなうことを目指しているが、本年度は、これら3つのアプローチのうち、③障害者運動の現代史研究にとくに注力したと言える。 なかでも本年度は、「障害者の自立生活」が、日本のテレビ番組(とくにドキュメンタリー番組)のなかでどのように描かれ、語られてきたのか、その一側面を明らかにすることを目指し、NHKアーカイブスが公募している「学術トライアルII」の「関西トライアルII 第1期」に、研究課題「テレビ番組における『障害者が自立すること』の語られかたの形成と変容に関する研究」として採択された。日本の障害者(運動)の置かれた社会的/歴史的背景と、映像メディアにおける障害者表象はどのような関係にあるかを探るための実証的データとしてNHKの映像アーカイブスを捉え、福祉政策や障害者運動の資料と照合させることで、「障害者運動の現代史研究」の一助とした。これらのデータと分析を、論文刊行など一定の成果としてまとめていくのは、来年度以降となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・NHKの所有する(いまだ実験的な試みではあるものの)貴重なデータベースにアクセスし、資料が利用できたことは今後の研究にとって大きな収穫となった。 ・大量に得られた映像および音声データの整理と分析は途上にあるが、現状としては順調である。 ・以上は順調に進んでいるが、フィールドワーク調査の実施がやや難航しており、今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
・研究目的を達成するための3つのアプローチのうち、来年度以降はとくに、①フィールドワーク(参与観察/聞き取り調査)によって現場の実践を明らかにするミクロな研究に注力する必要がある。 ・今後は、障害者が「自立」を達成する方法のうち、なかでも「雇用/就労」に注目し、障害者が労働/就労現場で、健常者を含めた他の労働者たちとどのように「協働」を達成しているかという問いに重心を置いたうえで、調査/研究を実施したい。 ・そのための方策として、神戸市内でもとくに先進的な試みをおこなう2つの社会的事業所へのフィールドワーク(参与観察/聞き取り調査)を計画し、実施する。 ・また、「現場を取り巻く現代社会の論理の変化や財政などの動きを追うマクロな研究」の充実もはかる。おもに国の内外を問わず勃興しつつある「社会的起業」の展開と障害者雇用および障害者の「自立」にとっての意義を、実態の把握とともに理解する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・設備備品費: 各種設備は所属機関において十分に提供されているため、本研究費からの利用の必要はあまりない。 ・消耗品費: 主に、論文抜き刷り、各地の障害者運動団体資料など各種資料の収集と整理。また文字資料によらず、ドキュメンタリー作品を中心とした各種映像資料の収集。調査票の印刷など。 ・旅費: 主に調査費用(国内)として使用。少なくとも2ヶ所の作業所を中心に定期的に訪問する必要がある。 ・その他: 通信費、調査対象者への調査依頼、または調査票の送付などの際の郵送費。 研究成果発表用費用(ホームページの作成と管理) 、サーバーレンタル料または報告書作成・印刷など。
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