2012 Fiscal Year Research-status Report
生活実践の変化と「公共性」の多様性に関する環境社会学的研究
Project/Area Number |
24730456
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
武中 桂 神戸女学院大学, 人間科学部, 助教 (10599880)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公共性 / 環境 / 地域(地域住民) / 実践 |
Research Abstract |
本研究では、主体形成や正当性/正統性の問題を軸としながら「公共性」のあり方について考える。本研究の問題関心は、ライフスタイルの変化に伴う「自然‐人間」関係における地域住民の環境活動、ならびにその活動と「環境保全」との関係性であり、特定の地域住民による主体的な環境活動が、次第に地域全体を巻き込みながら結果的に「環境保全」を導く可能性を分析・考察し、そこから派生する「新たな公共性」について提示することにある。 本研究では、淀川管内(京都府~大阪府)で実践されている環境活動「河川レンジャー」を主な調査対象とし、とりわけ1年度目は河川レンジャーおよび地域住民、関係する行政機関などへの聞き取り調査を主な研究内容としていた。しかしながら、本聞き取り調査を進める段階で次第にわかってきたことは、既に円滑に展開されている活動や活動主体を見ることはもちろん重要であるが、他方で同様の活動が展開されている(または、展開されようとしている)にもかかわらず、その活動が円滑な実践に至っていないとすれば、それはなぜなのか、について分析・考察を深めることの方が、より実践的な研究につながり、なおかつ具体的なモデルを構築する場合にも有意義だと考えられる、ということである。 したがって、1年度目においては当初の想定通りには調査・研究が進まなかった部分も少なくない。しかし、より実践的な意味を備えた調査・研究へという方向性を再設定できたことには意義があると考える。その意義を見出すにあたっては、文献購読による考察が大きく関与していると考えられ、文献調査という点においては当初の予定よりも充実した調査を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査を進めるにしたがい、当初調査対象として設定していたフィールド・団体を対象とするよりも、比較対象として位置づけていたフィールド・団体を対象としてこれからの調査を進めることに意義と本研究から導かれる結論の重要性を見出した。当初の予定では「うまく(スムーズに)展開されている」活動および活動団体のあり方、ならびにその活動と環境保全との関係性について分析をおこなうことを考えていたが、反対に「うまく(スムーズに)実施されていない」活動および活動団体のあり方を問うことに研究の重要性があるのではないだろうか。 すなわち、なぜ環境活動が円滑に実施されないのかを考察し、その活動が果たして当該環境の保全にはどのような意味をもたらすのか、またその活動を円滑に展開させるためには誰がどのようなことをすべきか、などについて分析することで、研究の成果をより実践的なモデルとして提示できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、本研究の目的はそのままに、対象をやや変更し、とらえるべきポイントも少しシフトする。 「うまく(スムーズ)に展開されていない」活動の対象としては、当初比較対象として設定していた猪名川流域(兵庫県)をメインの対象として設定し、なぜ猪名川流域においては「河川レンジャー」の活動が円滑に展開されないのか、について、活動実践者、地域住民、猪名川河川事務所などへの聞き取り調査を主な手法としながら調査を進めていく。まずは「生活」の側面に即して当該地域の自然環境と地域住民との関係性の歴史的変遷を描き出し、その上で当該地域における「河川レンジャー」の位置づけや有効性等について分析する。実質的に機能していないにもかかわらず「河川レンジャー」としての登録をしている人々への聞き取り調査からは、なぜ実践的な活動を伴わないにもかかわらず「登録」をしているのか、なぜ活動が円滑に進まないのか、円滑に進まないことによってどのような事象が生じるか、あるいは活動自体はスムーズでないにもかかわらず「環境保全」との均衡を図れているとすればなぜそのようなことが可能となっているのか、などについて明らかにする。そして、円滑な環境活動の遂行へと促すことを念頭にその活動の意義を問い直し、普遍化できる環境活動のモデルを構築、そこでの「公共性」のあり方(「公共性」が構築される過程)を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
猪名川河川事務所、および猪名川周辺の地域住民への聞き取り調査(フィールドワーク)をメインとするため、その調査費(交通費・謝礼(謝品)など)、ならびに聞き取りデータのテープ起こし作業の依頼および作業費、調査に必要となる物品購入に充当する。比較対象地での調査も行うため、その調査費充当分も含み、学会や研究会への参加費および交通費も含む。 また、関連書籍の購入や、データ保存用の記録媒体、必要に応じて画像・映像関連物品の購入も検討する。
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