2013 Fiscal Year Research-status Report
生活実践の変化と「公共性」の多様性に関する環境社会学的研究
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24730456
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
武中 桂 神戸女学院大学, 人間科学部, 助教 (10599880)
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Keywords | 公共性 / 環境 / 地域社会(地域住民) / 環境活動 |
Research Abstract |
本研究では、主体形成や正当性/正統性の問題を軸としながら、「公共性」のあり方について考える。本研究の問題関心は、ライフスタイルの変化に伴う自然環境と人間(生活、社会)との関係における地域住民の環境活動、ならびにその活動と「環境保全」との関係性であり、特定の地域住民による主体的な環境活動が、次第に地域全体を巻き込みながら、結果的に「環境保全」を導く可能性を分析・考察し、そこから派生する「新たな公共性」について提示することにある。 本研究では、当初、淀川管内(京都府~大阪府)で実践されている環境活動「河川レンジャー」を主な調査対象とし、河川レンジャーおよび地域住民、関係する行政機関などへの聞き取り調査を主な研究内容として設定していた。しかしながら、本聞き取り調査を進める段階で次第にわかってきたことは、既に円滑に展開されている活動や活動主体をみることはもちろん重要であるが、他方で同様の活動が展開されてる(あるいは、展開されようとしている)にもかかわらず、その活動が円滑な実践に至っていないとすれば、それはなぜなのか、について分析・考察を深めることの方が、より実践的な研究につながり、なおかつ具体的なモデルを構築する場合にも有意義だと考えられる、ということである。 したがって、2年目においては、当初の予定を変更し、猪名川河川敷(兵庫県)にて展開される同様の河川レンジャーの取組みを研究対象とし、調査・研究を進めた。1年度目の調査対象である淀川管内での活動と比較することで明らかになったのは、(1)活動の中心的役割を果たす「リーダー」の存在、(2)地域社会内での「リーダー」と地域住民との関係性、(3)「リーダー」と行政との関係性の3点が、活動の円滑な実施の有無にかかわる重要点であるということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目においては、1年目の調査・研究の結果を踏まえた上で調査対象を変更した。そのため、当初設定していた調査計画を2年目において、新たに設定した調査対象に対して遂行した部分が大きい。すなわち、当初の予定では「うまく(スムーズに)展開されている」環境活動を対象としていたが、2年目にはそれを「うまく(スムーズに)展開されていない」環境活動を対象とすることにより、なぜその活動が円滑に実施されないのかを考察した。 研究対象とする活動の変更があったため、当初の想定通りに調査・研究が進んでいない部分も少なくない。しかし、より実践的な意味を伴った調査・研究へと再設定できたことには意義があると考えている。同時並行的に進めた文献購読から得られたものも大きいと考える。順調に活動を展開する事例と、順調に活動を展開できていない事例とを比較することにより、活動における「リーダー」の存在意義について明らかにすることができたという点では、2年目の調査・研究の意義は大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、本研究の目的はそのままに、調査対象をやや変更し、とらえるべきポイントも少しシフトした。 2年目においては、同様の目的を設定しているにもかかわらず、「うまく(スムーズに)展開されている」活動と、「うまく(スムーズに)展開されていない」活動とを比較検討することによって、環境活動における「リーダー」の存在ならびにその果たす役割について理解することができた。 最終年度においては、比較検討から導いた結果をベースに、さらなる聞き取り調査、現地踏査を進め、普遍化できる環境活動のモデルの構築を目指す。さらに、そこでの「公共性」のあり方(「公共性」が構築される過程)を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、調査旅費ならびに聞き取り調査のデータ起こしのための費用として換算していたものが大きいが、調査対象を変更するに際し、調査回数(予定)が大幅に減少したり、収集データの分量に応じてデータ起こしを外部に依頼せずに自身で行ったりした。物品購入、文献購入、学会や研究会への参加等においては、概ね予定通りの額で遂行できている。 調査旅費、ならびに、聞き取り調査のデータ起こし充当額に関して、予定額プラス前年度よりの繰り越し分の遂行を考えている。 物品購入、文献購入、学会や研究会への参加等においても、予定額通りの遂行を考えている。
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