2012 Fiscal Year Research-status Report
ハンセン病問題のアクチュアリティ―ハンセン病経験者の自律と支援に関する実証的研究
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24730459
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
本多 康生 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害福祉研究部, 流動研究員 (50586443)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療社会学 |
Research Abstract |
ハンセン病を経験した人々の生を把握し支えていく上で、今まで十分な考察の対象となってこなかった「退所者の会」(セルフヘルプグループ)の参与観察および継続参加者への半構造化インタビューを、関東・関西・沖縄地方で実施した。それにより、社会的困難を抱えた退所者が社会参加を進めていく上で、セルフヘルプグループが果たす役割を分析するとともに、ハンセン病経験者間の繋がり(ピアサポート)の有効性と今後の課題について考察した。セルフヘルプグループの自己変革機能は、認識変容と行動変容の側面で捉えられ、例会の参加率の高い熱心な退所者は、ハンセン病に関するネガティブな意識が変わり自責感情から解放されつつあり、ピアサポートの教育的・社会的リハビリテーション効果の有効性を示していた。だがその一方で、退所者はセルフヘルプグループにおける交流と自らの日常生活とを弁別しており、セルフヘルプグループの中での現象を日常世界へ敷衍できないという問題も抱えていた。認識変容が、自主規制的な受療行動の改革や、家族・親族内の病歴秘匿に伴う制約など、具体的な行動変容には十分に結びついておらず、日常生活においてハンセン病の表徴を徹底して隠蔽してきた社会復帰後の行動の変容には至っていないことが課題として示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハンセン病療養所退所者が、社会生活においていかなる困難に直面し、現在どのような生活を送っているのかを、参与観察やインタビューに基づいて解明した。研究遂行のための実践は実を結んでおり評価できる。引き続き、当事者への研究成果の還元とアウトリーチを進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハンセン病経験者の生活の全体像を把握し、その生を多面的に支えるために、複数の療養所および関東・関西地方において、ハンセン病療養所入所者・退所者・非入所者・療養所看護職・介護職・ソーシャルワーカー・義肢装具士などに対する聞き取り調査と、退所者の会(SHG)の参与観察を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の調査範囲が予定よりも縮小したため、次年度の調査範囲を拡大した。物品費については、医療社会学・福祉社会学・地域社会学・家族社会学関連書籍代として70,000円を支出予定である。旅費については、全国の療養所および関東・関西地方での聞き取り調査・参与観察のため、170,000円を支出予定である。関連学会での情報収集に関する大会参加費などその他の費用として37,184円を支出予定である。
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