2013 Fiscal Year Research-status Report
基礎自治体における地域福祉の歴史的研究―二都市の戦後史の比較を通して―
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24730462
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
加川 充浩 島根大学, 法文学部, 准教授 (40379665)
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Keywords | 自治体福祉行政 / 被占領期 / 福祉事務所 |
Research Abstract |
本研究の目的は、敗戦後の占領期から昭和30年代の地方自治体の福祉行政の実態を明らかにすることである。 平成25年度は、特に、兵庫県の福祉行政に関する史・資料の蒐集を行った。兵庫県(県政資料館、県立図書館等)には、昭和20年から30年代にかけての福祉行政に関する史・資料が比較的まとまって保存されていることが判明した。 現在までに明らかとなったのは、次の5点である。 ①県議会で「社会福祉」の用語が登場するのは、昭和22年7月のことである。これは、前年制定の旧生活保護法を受けてのことと思われる。また、新憲法25条が2ヶ月前に施行されたことの影響もうかがえる。②県の福祉事務所が正式に発足したのは、昭和31年である。これは県内でも神戸市などと比較しても遅い。しかし、福祉事務所の前身は「地方事務所」であり、これは昭和17年に設立されている。戦前・戦後の分断と連続をどう考えるかは今後の課題である。③県レベルでの福祉行政を考える場合、次の2つを区別して捉える必要がある。一つは、県自らが有する福祉事務所での業務である。二つめには、県内各市への指導的業務である(町村は郡部福祉事務所なので対象外)。④福祉行政は、占領期に大きく推進・展開した。そのため、GHQ関係資料や軍政部資料も蒐集する必要がある(昨年度を終えての課題であった)。しかし、これら資料は兵庫県でも保存されていなかった。参考のため、資料保存が良好と思われる京都府でも調査したが、同様であった。⑤史・資料の中には、ケースワーカー養成など、福祉専門職の動向に関わるものも一定程度存在する。「行政施策」という論点に加え「福祉専門職」の視点からも、占領期の社会福祉を見る必要がある。 これらは先に述べた資料館等に残された資料から明らかとなったが、県史などにも記述がなく、新たな研究の成果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市町村のみならず、県レベルにおける社会福祉の状況についても史・資料蒐集を行うことができたためである。また、市町村れべる、および県レベルのそれぞれに関して、いくつかの論点を整理することができた。 県レベルの一次史・資料を発見・蒐集できたことが平成25年度の成果であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度のため、次の3つの研究を推進したい。第一は、昭和20年代から30年代にかけての兵庫県の福祉行政の全体像を明らかにすることである。特に、福祉事務所の設置、児童福祉への取り組み、および生活保護ケースワーカー養成が論点となる。第二に、市の福祉事務所の設置状況である。特に、全国に先駆けた神戸市の事例と、他市の比較を行いたい。第三に、自治体の意識である。特に、占領期に初めて導入された社会福祉という概念(具体的には施策)を、どう「受容」したかについて、明らかにしたい。 これらは、いずれも、これまでに蒐集した史・資料を分析するという方法を採用する。
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