2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者福祉に対する子どもの感性を育む地域コミュニティ:幼老複合施設の新しい試み
Project/Area Number |
24730464
|
Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
片山 めぐみ 札幌市立大学, デザイン学部, 講師 (40433130)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 世代間交流 |
Research Abstract |
今年度の調査から以下の結果が得られた。 ①「老い」や死についての学び:子どもと高齢者のコミュニケーションは必ずしも会話や共同作業などといった積極的な交流が効果的とは限らない。「同じ空間に居合わせる」、「互いの行動を眺める」などのように、日常的に自然に接するといった、一見、消極的な交流が人の「老い」や死を知る機会となる。このことを誘発するハード環境には、以下のような点が挙げられる。I.入口がひとつで共有されている、II.入口付近に共有スペースがあり、利用者動線の中継地点である、III.まちなかの路地のようにそこに出れば住人の様子が伺えるような「通り」がある、IV.通りに沿って休憩場所があり、周囲を眺めることができる、V.子どもが継続して利用したくなるおもちゃやTVなどがある。 ②介護体験や福祉の感性の育成:職員やボランティアによる介護を目にしたり、手伝うことによって弱者を見守る、助けるという、人と人との関係性を理屈抜きに体験できる。将来、家族介護や介護職に繋がる福祉の感性を身につけることができる。 ③地域福祉コミュニティへの参加:地域住民のボランティアスタッフを手伝ったり、施設運営の役割を担うことによって、地域福祉コミュニティに参加する体験が得られる。幼老複合施設の組み合わせに関しては、デイサービス施設は、利用者である老人が毎日入れ替わるため交流頻度が低く時間も短い。保育園は、子ども達が短期間で卒園してしまうことや、年齢的に福祉を体験したり学ぶには理解度や交流の幅において限界がある。本調査が対象とした居住系老人福祉施設と学童クラブの組み合わせは、個人と個人の長期的・固定的な関係醸成が期待できる。居住系の施設であるがゆえに、継続的に高齢者とふれ合うことができ、周囲の人々の接し方によって症状が変化する認知症の特徴なども理解する機会になる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は以下の研究を実施し、概ね研究計画書通りの進行状況である。 まず、特別養護老人ホームなどの居住系老人福祉施設に併設される学童クラブ(児童館)の全国における件数や運営実態をアンケート調査により把握した。次に、子どもと高齢者などの日常的な交流促進を試みている施設において、具体的な交流の内容、空間のつくり、職員の関わり方の実態を観察・インタビュー調査した。 1.全国の動向調査:特別養護老人ホームなどの居住系老人福祉施設に併設される学童クラブ(児童館)をインターネットで検索し、施設名や所在地を調べた。 2.交流促進の工夫と「老い」や死の学びの実態把握:アンケート結果から、子どもの体験や学びを意識し、交流を効果的に引き出す工夫を実施している施設として、京都市の社会福祉法人健康園が運営する「高齢者福祉総合施設 ももやま」を選出し上記の研究結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下のように研究を遂行する。子どもが、高齢者との日常的な交流から何を感じ、「老い」や死をどのように受け止めているのか、周囲の大人がどのようにサポートしているのか把握する。次に、こういった場に継続的に関わった子ども達が、成長したのちにどのような福祉活動や意識をもつようになるのか追跡調査を行う。いずれの調査も半構造化インタビューとし、対象者や交流実態に合わせて詳しい状況把握を深めていく。分析は、質的研究方法を採用し、繰り返し聞かれる心情やエピソードをデータとしてコード化、カテゴリ化することにより、子どもと高齢者、周囲の大人との関係について個別理解から全体理解へと導く。研究結果を日本建築学会計画系論文集へ投稿する他、EDRA44 (Environmental Design Research Associationで口頭発表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度予定していた支出のうち残額が生じた理由は、予定していた3回の京都出張のうち2回が中止になったためである。 次年度は、国内旅費および海外旅費、謝金等に使用する予定である。 ①調査のための国内旅費→\273,000 内訳:京都市(3泊4日)\91,000が3回分 ②研究発表のための海外旅費→\260,000 内訳:アメリカ(5泊6日) ③謝金→\90,000 ④その他(コピー代、インタビュー依頼書送付料、論文登載料)→\79,774
|