2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730476
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
野田 博也 愛知県立大学, 教育福祉学部, 講師 (00580721)
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Keywords | ストック / 貯蓄 / 金融排除 / 金融包摂 / 貧困 |
Research Abstract |
本研究の目的は、不意の出費や生活基盤の形成に関わる有形・私有のストック資源に焦点を置き、そのストック資源を充足する貧困対策の意義やあり方、課題を明らかにすることである。 2年目は、アメリカを中心とする個人開発口座等を活用した貯蓄推進政策および金融サービスの利用や家計の支援を重視するフィナンシャルソーシャルワークに関する情報収集・動向把握を実施した。また、このような貯蓄支援は基礎的金融サービスの在り方を重視する金融排除・金融包摂の枠のなかで論じる必要があるが、この点については(昨年度に引き続き)関連する政策・実践の蓄積があるイギリスの動向を調べるとともに、日本の動向についても国内の先行研究を幅広くレビューした。 研究成果としては、後者のイギリスと日本に関する論文を執筆した。1本目は「近年のトインビー・ホールとセツルメントの実践原理」(愛知県立大学教育福祉学部論集)である。この論文では、セツルメントの嚆矢としても知られ、現在はイギリスにおける金融包摂の実践に関わる代表的な民間機関のひとつでもあるトインビー・ホールの実践をまとめた。トインビーホールは貧困撲滅を活動目的に掲げながらも、特に貧困の社会関係的側面に対する活動を重視しており、そのなかのひとつに金融サービスからの排除を位置付け、特定地域から全英レベルにいたるまで幅広い活動を展開していた。 2本目は「日本における金融排除の動向(2000-2012)」(愛知県立大学大学院人間発達学研究科)である。この論文では、国立国会図書館のデータベースを利用して「金融排除」の用語を主に使用している日本語論文のレビューを行った。関連論文の多くは金融改革または郵政民営化以降に看守できるが、既存の社会政策と金融サービスとの関連についてなど社会政策の観点から論じる余地が多々残されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ストック確保の手段として貯蓄促進を当初は想定していたが、預貯金を含む基礎的金融サービスの在り方から論じる必要性のあることが本研究を通じて明らかになった。研究期間内において全てを明らかにすることは不可能であるが、共通基盤となる金融排除・金融包摂に関する議論を大よそ踏まえておく必要がある。このための研究を進める時間を要しており、当初の予定よりも遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、共通基盤となる金融排除・金融包摂論の動向を踏まえるとともに、貯蓄を重視する貧困対策のアプローチについても調査研究を進めていく。貯蓄を推進する手法の特質を理解するためには、他のストック確保・保全の手法との比較による考察も有効となる。たとえば、貸付(借入)は貯蓄と対比されることのある手法であるが、このような異なる手法の在り方との比較を通じて貯蓄の在り方についても考察を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画を若干変更したために支出費目にも若干の変更が生じた。 研究計画を遂行するために必要な物品費等の購入に充てる予定である。
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