2012 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設で生活する当事者の自立生活への移行過程と社会的援助に関する縦断的研究
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24730485
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
谷口 由希子 日本福祉大学, 福祉社会開発研究所, 研究員 (80449470)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 子ども時代の貧困 / 社会的包摂 |
Research Abstract |
【研究1:進路選択・自立生活に関する先行研究のレビュー】は、主に児童養護施設からの自立に関する調査や政府発表資料、児童養護施設の援助実践、学校卒業における進学および就職と移行過程に関する文献研究を中心として実施した。本年度はとりわけ、児童養護施設に関する政府発表資料と統計を中心に分析を行った。 【研究2:は当事者の自立生活への移行過程を追跡する2年6カ月の縦断調査とその結果の分析】であり、(1)当事者への繰り返しのインタビュー、(2)ケース記録による施設職員の援助実践、(3)退所後の社会的援助状況の調査を行い(1)(2)(3)の結果を分析するものである。本年度の実施状況も各項目に分けて記載する。 (1)当事者インタビュー調査は、半構造化面接の手法を用いて児童養護施設内において個別に行った。当事者からは、進路選択の主たる理由と自立後の生活のイメージについて語られた。 (2)の施設職員の援助実践は、(1)によって語られた子ども自身の主体的な選択と生活過程について、ケース記録の分析をとおして職員の援助実践と当事者の生活過程における相互作用を分析し、客観的課題を明らかにするものである。本年度は、職員の援助実践の参与観察とインタビュー調査を中心に行った。 (3)の退所後の社会的援助状況調査では、「子ども時代に親と離れて暮らした経験のある」ホームレス生活等経験者を39名アンケート調査によって把握し、今年度から開始するの施設退所後の生活過程の分析調査の土台を形成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象施設および調査対象者の協力もあり、当初の予定通り調査は実行できている。本年度は、1.先行研究のレビューとともに2.児童養護施設における縦断的調査に着手した。 1.先行研究のレビューは、主に児童養護施設からの自立に関する調査や政府発表資料、児童養護施設の援助実践、学校卒業における進学および就職と移行過程に関する文献研究を中心として行った。さらに、保育に関する研究集会に参加することをとおして、児童養護施設入所児童の保育所における発達保障の意義を検討した。 2.当事者の自立生活への移行過程を追跡する2年6カ月の縦断調査とその結果の分析では、当事者への繰り返しのインタビュー、ケース記録による施設職員の援助実践、退所後の社会的援助状況の調査項目に分類し、まずは当事者への繰り返しのインタビュー調査を半構造化面接の手法を用いて行った。本調査は、1-2か月に一度の割合で児童養護施設に調査に出向き、子どもとの関係を作りながら子どもの進路決定における意思形成の過程について聞き取りを行った。 3.退所後の社会的援助状況調査は、本年度計画では調査対象外であったものの、ホームレス生活経験者かつ社会的養護のもとで育った経験者のデータを得ることができたため、本年度から着手し、次年度以降の退所後児童の調査と合わせて分析を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降の2年間は、当事者の生活過程を追跡する縦断調査の継続と退所後の自立援助体制の検討を行う。さらに最終年度である平成26年度では、研究分野ごとの結果を統合し、本研究をまとめる。 平成24年度からの引き続きの課題である当事者の生活過程の縦断調査では、基本的には施設を退所した後の生活過程の追跡調査となる。したがって、2年目以降の調査は施設外における当事者インタビューと施設からの自立支援の分析が中心となる。ただし、調査対象者は平成24年度に中学3年生/高校3年生であった当事者を選定しているため、平成25-26年度は高校や大学に進学しながら施設での生活を継続している当事者もいると推測される。こうした当事者についても、「主体的な進路選択の結果」における現在の生活過程を分析するという意味において、退所後ではないが引き続き調査対象として調査を継続する。調査計画としては、退所後の当事者(施設での生活を継続している場合の当事者も含む)の追跡調査、施設による退所した当事者への自立支援を分析するための調査である。 退所後の自立援助体制の検討は、調査対象者の施設退所後の社会的援助体制を調査し分析する。ここでいう社会的援助とは、施設、地方自治体、児童相談所、自立援助ホームNPOなど児童養護施設を退所した当事者に対する社会的援助機関による継続的な援助実践を指している。具体的な方法として、まず退所後の自立支援実践の具体的内容と状況の調査を行う。地方自治体調査では児童養護施設が自立援助を実施できる体制を整えるための地方自治体単独事業の実施状況の調査を行う。児童相談所調査では、措置解除後の関わりと施設との協力体制について調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、使用していく。以下、項目ごとに示していく。 設備備品費では、児童養護施設および子どもの進路選択に関する図書および統計資料を入手する予定である。消耗品費は、政府公刊物や関連研究資料を印刷するために必要なプリンタトナー、印刷用紙、文具類を購入する予定である。旅費は、今年度3回国内学会における発表を予定しており、そのための旅費である。さらに本研究は2つの児童養護施設において縦断調査を実施するため年4回(各年×2施設)の調査旅費として支出する予定である。また、今年度からは退所後の当事者調査を行うための調査旅費(2年目4回、3年目2回)や援助機関において非参与観察と聞き取り調査するための調査旅費(2年目4回、3年目4回)も支出予定である。
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