2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730487
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
鈴木 佳代 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 主任研究員 (90624346)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ライフコース / 健康 / 高齢者 / ソーシャル・キャピタル / 社会経済的地位 / SOC |
Research Abstract |
本研究は,高齢者のライフヒストリーをインタビュー調査により聞き取り分析することで,ライフコース的視点から高齢期の健康の維持生成プロセスを明らかにしようとするものである。平成24年度春から夏にかけてはその準備として,(1)文献購読や他の質的研究者との共同学習を通じて質的調査方法に関する検討を行う,(2)高齢者の生活やライフコース・ソーシャルキャピタル・健康に関する文献購読を行うという2つの研究活動を行った。 9月に3名の高齢者を対象に行ったインタビューをパイロットスタディとし,その状況を踏まえて,当初計画していた一人一回一時間半程度の面接を60名に対して行う方法から,20~25名の高齢者に対し,二回にわたって丁寧にライフヒストリーを聞き取る方式へと調査方法を変更した。それにより,一回あたりの対象者の負担を減らしつつ,より緻密なデータを得ることができるようになった。その後,さらに4名の高齢者とインタビューを行い,計7名(男性3名,女性4名)のデータを得た。 7名とのインタビューは専門業者による文字起こしを行った後に,質的調査用のフリーソフトを用いて,断片化作業(発言を要素ごとに分け,インタビューごとに数百のカードを作成すること)を行った。この作業は,交付申請書に記載した研究目的を達成するうえで必要な準備作業であり,今後さまざまな切り口からインタビュー結果を分析することが可能になる。 11月には第85回日本社会学会大会に参加し,ライフコースを通じた健康生成に関する量的分析の報告を行った。さらに3月には,高齢期の健康の維持生成に関するレビュー論文として,『Geriatric Medicine(老年医学)』からの依頼論文の原稿執筆に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ライフコース研究や質的調査方法について文献パイロットスタディを受けて修正した研究計画では,20~25名の高齢者を対象に,2回にわたってライフヒストリーを聞き取ることを目標としている。当初計画では平成24年度から25年度にかけてインタビュー調査の大半を完了させることをめざしていた。平成24年度9月から2月にかけて,7名への聞き取りを完了したことから,調査はおおむね順調に進展していると言える。 質的アプローチを通じてダイナミックなライフコースの中に健康の社会的決定要因を見つけ出すため,面接においては半構造化面接法を用いており,高齢者本人のナラティブを引き出すことに成功している。 この寄与要因として,研究のクオリティを担保するため,文献購読に加えて,5月に質的研究の共同勉強会を開催し,他の研究者と互いの研究方法に対するクリティカル・レビューを行ったことが挙げられる。 一方で,これまでにインタビューした7名は社会経済的状況が比較的恵まれた層に偏っていたため,累積的有利・不利理論の検証を行うには,今後の調査参加者のリクルートにおいて工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,15名程度を目標にライフヒストリー・インタビューを行い,文字起こしと断片化作業を行う。平成24年度には,愛知県武豊町にある「憩いのサロン」に参加している高齢者を対象としてインタビュー参加者をリクルートしてきた。その結果,これまでにインタビューした7名は社会経済的状況が比較的恵まれた層に偏りがちになった。平成25年度には,武豊町の地域包括支援センターが戸別訪問を行っている高齢者を紹介してもらうことで,社会的不利層・周縁層を含めた聞き取りを行うことをめざす。 また,10月に開催される日本社会学会において,これまでに聞き取りを行った7名から得られたデータの分析結果を用い,大きなストレス負荷がかかった際の「乗り越え」に関する報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究費からは62,353円が25年度研究費へと繰り越しされた。これは,調査方法および文字起こし業者の変更に伴い,年度途中でインタビュー実施に関わる費用が不足することを防ぐため,10万円の前倒し申請を行ったことにより発生したものである。平成25年度研究費では,この繰越金についてもインタビュー調査実施費用を中心に,下記の用途で使用する計画である。 インタビュー調査実施にあたっては,インタビュー協力者のリクルート時(「高齢者憩いのサロン」もしくは地域包括支援センター)およびインタビュー時(各地域の公民館もしくはインタビュー協力者自宅)のフィールドとなる愛知県武豊町までの交通費(往復1,680円~1,880円)と,一回の面接あたり1,000円の謝金が1名につき2回分発生する。また,インタビューデータを文字起こしする作業において,一分あたり210円の業務費が発生する。15~20名を目標にインタビューを実施するため,交通費に53,000円,謝金に30,000円,文字起こし作業に630,000円(一人当たり150分として20名分)を計上する。 秋の日本社会学会は東京で行われる。この出張旅費約32,000円も支出する。
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