2014 Fiscal Year Research-status Report
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24730487
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 佳代(鈴木佳代) 愛知学院大学, 総合政策学部, 講師 (90624346)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ライフコース / 健康 / 高齢者 / 社会参加 / ソーシャル・キャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者のライフヒストリーをインタビュー調査によって聞き取り、ライフコース的視点から高齢期の健康の維持生成プロセスを明らかにしようとするものである。平成26年度には、前年度までに実施した20名へのインタビュー調査から得た活字データを質的分析用ソフトウェアを用いて断片化(発言を要素ごとに分け,インタビューごとに数百のカードを作成すること)し、分析軸に沿った分析を行った。 また、実施を予定していた「社会的つながりの薄い高齢者へのインタビュー」が実施不可能になる事情が生じ、質的データの幅を広げることが難しくなったため、他の研究者からの助言も得て、研究計画とデザインの変更を行った。具体的には、量的データの二次分析と本研究費で実施した質的データとを組み合わせ、量的データの分析で得られた知見を質的な視点から検討する「混合研究法」を用いた分析へと研究デザインを切り替えた。混合研究法は量的・質的分析それぞれの限界を超えうる研究方法として注目を集めており、新たな知見の発見やより強固なエビデンスに結びつくことが期待される。また、この研究デザイン変更の過程で本研究プロジェクトの焦点を「高齢期の健康の維持生成の一因としての社会参加」に絞り、高齢期の社会参加に至る経路を様々な視点から明らかにするという分析目標をたて、具体的な検証仮説5点を設定するに至った。 平成26年度のアウトプットとしては、以前に見出した「女性にとっては職歴がないことが高齢期の社会参加の少なさと関連する」という知見に関して分析の精緻化をすすめ、7月の世界社会学会議および10月の第87回日本社会学会大会で、高齢者女性の就労経験と高齢期の社会参加に関する量的・質的分析の報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度には分析結果を2つの学会で報告し、一定の成果を出した。しかし論文や書籍等、より多くの人の目に触れる形の成果物にはつながっていない。その理由として、前年度まで勤務していた研究センターの研究員という立場を離れ、平成26年4月から私立大学専任講師の職に就いたことが挙げられる。着任初年度には授業準備等の負担が多く、論文執筆の時間を確保することが困難であった。 また、より幅広いタイプの高齢者から質的データを得ることを目的に、平成26年度中に実施を予定していた「社会的つながりの薄い高齢者へのインタビュー」が、協力者を募る手段となるはずだった別調査の担当者の産休・育休により実施不可能となった。そこで、すでに得られた20名のインタビュー・データを最大限に活用するべく研究計画を変更し、インタビュー・データを既存の量的データと組み合わせて分析し、論文化・書籍化する構想を立てた。また、各種の研究会に出席して他の研究者からアドバイスを受ける中で、本研究プロジェクトの焦点を「高齢期の健康の維持生成の一因としての社会参加」に絞り、論文化・書籍化に向けた検証仮説5点を設定した。 上記二点の事情から、研究そのものは前進しているものの、予定していた調査の中止や計画変更により、当初の計画とくらべて若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新たなインタビューは実施せず、高齢者を対象とした大規模社会調査(JAGES日本老年学的評価研究)データの二次分析を行い、本研究費でこれまでに得られたインタビュー・データを用いた質的視点からの検証する「混合研究法」により分析を進める。 平成27年度の活動の主眼は、学会報告と論文化に置く。学会報告としては、平成25年度までに実施した20名へのインタビュー結果について,検証仮説にもとづく分析を行い、そのうち1点(転居が高齢期の社会参加に及ぼす影響)については9月に東京で開催される日本社会学会で、また別の1点(高齢期の新たな交友関係と社会参加の場に関する分析)については11月1日に福岡で行われる社会政策学会で発表することを計画している。論文投稿は、平成26年度に日本社会学会で報告した、高齢者女性の就労経験と高齢期の社会参加に関する量的・質的分析結果を論文化し、学会誌『社会学研究』に投稿する予定である。 また、残り2点の検証仮説(壮年期の仕事が高齢期の社会参加に及ぼす影響・15歳時の社会経済的状況が高齢期の社会参加に及ぼす影響)については、順次論文化を進める。
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Causes of Carryover |
愛知県東海市大池地区での追加調査が実現せず、調整・調査実施の交通費や協力者への謝礼、インタビュー・データの文字起こし費用が不要となったため、研究費使用額が大幅に減った。一方、研究計画の変更により、量的データの二次分析を行うためのソフトウェア(SPSS)を購入した。その結果として、約15万円の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度から繰り越した15万円については、平成27年度の予算30万円と合わせ、テキストマイニングソフトウェア(IBM SPSS Text Analytics for Surveys:334,476円)の購入に充てることを計画している。本研究費を用いた調査でこれまでに行ったインタビューのテキストデータはA4用紙で126ページ、100万字超に上る。これまでは情報カードをパソコン上で作成して組み替える、いわば手作業的な分析ソフトウェアを用いてきたが、データ量の大きさを勘案し今後の分析を効率的に行うため、また質的データの新たな分析の可能性を探るため、本ソフトウェアが有効活用できると期待される。 また、9月の日本社会学会への出張旅費約35,000円および11月の社会政策学会への出張旅費約60,000円を支出する。 その他、論文作成時に参照するための書籍費20,000円を計上する。
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