2014 Fiscal Year Research-status Report
施設コンフリクトとソーシャル・キャピタルとの相関に関する比較実証研究
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24730492
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
野村 恭代 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (10461188)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交流(イタリア・トレント) / イタリア地域精神保健福祉 / UFE / ソーシャルキャピタル / つながり / コンフリクト / 信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、施設コンフリクト発生とその合意形成には地域の社会関係資本が関与していることを明らかにすることを目的としている。つまり、施設コンフリクトを乗り越えることによりコンフリクト当事者間の絆が深まり、地域の社会関係資本が高まる可能性を実証的に明らかにすることである。 上記の目的に基づき、平成26年度は昨年度実施することができなかった、イタリア・トレント(トレンティーノ=アルト・アディジェ州)での調査を遂行した。本調査では、UFE(Expert Users and Family members)が専門家として地域で活動することと、地域のソーシャル・キャピタルとの相関について検証を行った。その結果、UFEはトレントにおいてさまざまな役割を担っていることが明らかになった。そのなかでも最も重要なものは、トレント精神保健サービスの一部として「人と人とをつなぐ役割」を果たしていることであった。具体的には、UFEは患者や家族と専門職との間をつなぐだけでなく、さまざまな社会資源の間を、専門職の間を、そして患者や家族の間をつないでいることが示された。さらにトレントでは、地域精神保健福祉に限定せず、町をあげてさまざまな取り組みが行われていることも明らかになった。 また、7月にはトレントからレンツォ・デ・ステファニ氏(トレント精神保健センター長)及びUFE2名を招き、行政関係者、福祉関係者、地域住民等を対象にトレントモデルに関する講演会・シンポジウムを開催し、日本におけるトレントモデル導入の可能性について検討を行った。 上記の成果に関しては、複数の学会等において発表、報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度実施することができなかった、イタリア・トレント(トレンティーノ=アルト・アディジェ州)での調査を遂行することができた。さらに、トレントからレンツォ・デ・ステファニ氏(トレント精神保健センター長)及びUFE2名を日本に招き、行政関係者、福祉関係者、地域住民等を対象にトレントモデルに関する講演会・シンポジウムを開催することにより、日本におけるトレントモデル導入の可能性について検討を行うことも可能となった。これらの調査研究の状況は、当初予定していた研究計画に沿ったものであり、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまでのアンケート調査結果およびインタビューデータの分析をさらに深める。社会関係資本の視点および精神障害者観からの視点の双方からのデータをつき合わせることにより、施設コンフリクト発生および合意形成に及ぼす社会的要因を社会関係資本の観点に基づき分析を行う。さらに、施設と地域との良好な関係性を構築するための条件についての理論化を試みる。また、必要な場合にはイタリアでの補足調査を実施する予定である。 今年度が最終年度となるため、学会にて二次発表を行うとともに研究者とのディスカッションを活発に行う。さらに、学会での発表およびディスカッションを繰り返すことで理論を精緻化し、4年間の成果をまとめた報告書を作成し協力者等に配布する予定である。
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Causes of Carryover |
平成25年度に実施できなかったイタリア調査に係る費用を平成26年度に計上していたが、調査費用及び通訳者の費用を低く抑えることが可能となったため、次年度使用額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究成果をまとめた報告書を作成し、関係機関等に広く配布する。また、必要に応じて補足調査を実施する。
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