2012 Fiscal Year Research-status Report
施設で暮らす認知症高齢者の周辺症状に音環境が与える影響
Project/Area Number |
24730494
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
宮川 雅充 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (40389010)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 認知症 / 高齢者 / 音環境 / 特別養護老人ホーム |
Research Abstract |
認知症高齢者の周辺症状(徘徊・大声・焦燥など)は,施設で働くケアスタッフにとって負担となっていることが知られている。一方で,近年では,施設における音環境(騒音)が,認知症高齢者の周辺症状を引き起こす場合があることも指摘されている。 本研究の目的は,認知症高齢者の周辺症状と音環境の関係を,ケアスタッフを対象としたインタビュー調査,および,施設における音環境測定を実施することにより,明らかにすることである。研究成果から,個々のケースなどへの対処,あるいは,居室配置への配慮など,音環境に起因する周辺症状を軽減するための施策を提言する。 平成24年度は,随時資料収集を行いながら,以下のことを行った。最初に,調査(インタビュー調査および音環境測定)の内容を検討し,決定した。調査の内容については,「関西学院大学 人を対象とした臨床・調査・実験研究倫理委員会」の審査を受け,研究の実施を承認された。続いて,東海地方にある特別養護老人ホーム(1施設)の協力を得て,12名のケアスタッフを対象に,インタビュー調査を実施した。インタビュー調査は,1. 基本情報の聞き取り調査,2. 健康状態・職業ストレスに関わる質問紙調査,3. 認知症高齢者のケアに関する聞き取り調査,の3つの行程からなり,1名ずつ実施した。また,同施設の認知症高齢者の生活する空間(屋内)において,1時間の音環境測定(発生源・騒音レベル・突発音などの情報を記録)を10ヶ所で実施した。 現在,上記の調査結果を分析しながら,別の施設での調査を計画中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は,東海地方にある特別養護老人ホーム(1施設)において,1. 施設で認知症高齢者のケアを行っている者(ケアスタッフ)を対象としたインタビュー調査,2. 認知症高齢者の生活する空間(屋内)の音環境調査(発生源・騒音レベル・突発音などの情報を記録)の2つ調査を実施した(以下,「平成24年度調査」と表記する)。平成25年4月現在,平成24年度調査の結果を分析しているところである。今後は,平成24年度調査の結果を分析しながら,別の施設において同様の調査を実施する必要がある。 本研究の目的を達成するには,上記の1. インタビュー調査と2. 音環境調査の成果をリンクさせた上での総括が必要不可欠である。そのため,調査内容・計画については,1つの施設での調査が終了するたびに,ある程度見直すべきであると考えている。平成24年度調査の分析を行いながら,インタビュー調査で被験者(ケアスタッフ)が語った内容が,当初の予想よりも,多様であり,かつ有意義な内容であると感じている。よって,平成24年度調査のインタビュー調査の結果を,ある程度総括し,その成果を踏まえたうえで,新たな調査を始めた方が,最終的により良い成果が得られると考えている。 本来ならば,平成25年度は,別の施設での調査をすぐにでも開始したいところであるが,平成24年度調査の総括をある程度済ませた後,別の施設での調査を開始する予定である。そのため,当初の研究計画と比べると,現在までの達成度については,「やや遅れている」という判断にならざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に実施した調査において,最も苦労した点は,調査に協力していただく施設との日程調整であった。 平成24年度に調査を実施した施設では,12名のケアスタッフを対象に1時間程度のインタビュー調査を1名ずつ実施したが,何度か,一度確定した日程を変更せざるを得ない場面があった(変更理由は,研究代表者の校務の影響や被験者からの変更希望,等)。時には,午前にインタビュー調査を予定していた方に急用が入ったため,急遽,午後に予定していた方が交代して対応してくださるなど,調査協力施設の皆様の親身な協力があった。平成24年度の調査では,施設の皆様の協力によって,予定通りの時期に調査を完了することができたが,高齢者のケアという極めて多忙な仕事をしているケアスタッフに対して,1時間程度の時間を作ってもらうには,相当の配慮が必要であることを痛感した。今後も,施設の迷惑とならないように,施設やケアスタッフの意向を最大限に配慮しながら,調査を進める予定である。 平成24年度の調査では,10月~3月の時期に毎月一度,インタビュー調査を行ったため,1泊2日の出張を計6回必要としたが,平成25年度に行う調査では,夏季休暇や春季休暇などの講義予定のない時期を有効に活用したいと考えている。平成24年度の夏季休暇は,調査内容の決定,調査内容の「人を対象とした臨床・調査・実験研究倫理委員会」での審査の準備,等に時間を割かれたが,平成25年度は,調査の実施に集中できる見込みである。調査協力施設の意向を尊重しながら,効率的な調査計画をたてたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に必要な主要物品(騒音計および管理ソフト)は,平成24年度に購入済みで,準備は完了している。騒音計が1台しか購入できなかったことを除けば,物品についての準備は予定通り進んでいる。なお,平成24年度に「前倒し支払い請求」をした。その理由は,平成24年度に調査を行った施設が,若干遠方にあったため,当初の予定よりも旅費が必要となったからである。前倒し支払請求をしたときに,旅費に使用するものとして若干の余裕を見込んでいたため,未使用額が発生した。 今後,2カ所の施設で,平成24年度と同様の調査を行う予定であるが,平成24年度の施設よりは,近隣の施設になる見込みである。よって,残りの研究費で研究目的は達成できる見込みである。平成24年度未使用額及び平成25年度の研究費は,主として,調査や資料収集のための旅費,調査協力に対する謝金等に使用予定である。
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