2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730495
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
水上 然 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 講師 (70620748)
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Keywords | 高齢者虐待 / 韓国 / 国際比較 / 自治体 / 地域包括支援センター / 老人保護機関 |
Research Abstract |
本研究では、高齢者虐待防止施策について韓国と日本を比較した上で,両国の虐待防止体制を強化するための方策を考察し,より望ましい虐待防止体制を提案を行っている。 韓日両国の高齢者虐待防止施策のレビューから明らかになったのは主に以下の3点である.①韓国においては中央老人専門保護機関を設置し国の役割をより明確にすると共に,全国的な虐待事例のデータ分析からプログラム開発につながるPDCAサイクルを組み込んでいること.②韓国では広域自治体,日本では基礎自治体の単位で虐待防止体制が組まれていること.③韓国では高齢者虐待に特化した専門相談機関が,日本では地域の包括的な総合相談機関が高齢者虐待に対応していること. 韓国の高齢化率は日本に比べまだ低く,コミュニティベースでの在宅サービスはこれから発展していく余地があり、基礎自治体レベルで高齢者に関する「一般相談」に対応できる機関の設置,並びに専門家の育成が急務であった.一方、日本においては虐待相談に特化した機関が無く、相談機関が分散化されており、法律問題や精神保健対応を含むより専門的な虐待事例への対応力を強化させる必要が認められた. そこで、本研究では今後の両国の虐待対応における望ましいあり方として,基礎自治体レベルつまり総合相談機関での虐待対応能力を高め,地域全体の力を活用しつつ,虐待相談に特化したより高度な専門性を持った機関を広域自治体レベルに置く,韓国と日本のシステムを融合し発展させた形を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、これまでの研究成果を研究論文『高齢者虐待防止施策の韓日比較』にまとめ地域福祉研究に発表した。次に、自治体および地域包括支援センターにおける継続した虐待対応の実践について担当者と意見交換を行うと共に、匿名化された高齢者虐待の相談通報事例のデータを分析し、自治体における虐待事例の現状と対応状況を明らかにした。これらの研究結果は、日本老年社会科学会の小講演にて発表を行うと共に、国際ソーシャルワーク会議(メルボルン)の演題(e-Poster)に採択された。また、韓国の長期療養保健施設、日本の介護保険施設を視察し、虐待を受けた高齢者の支援のあり方について情報交換を行った。韓国の共同研究者と共に「高齢者虐待について意識」に関する調査票を作成した。以上のことから、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究において、日韓両国の高齢者虐待防止施策の背景となる社会的・文化的な文脈や高齢者虐待についての意識を明らかにする。具体的には、日韓両国で「高齢者虐待についての意識」の調査を行う。調査の対象は、高齢者虐待に直面する可能性のあるケア専門職等を予定している。高齢者虐待についての意識調査では、過去の調査を参考に「高齢者虐待についての意識」に関する指標を作成し調査を行う。その際、「家族の扶養」「高齢者のイメージ」「敬老思想」「エイジズム」などをキーワードとして調査し、社会文化的な文脈の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国と日本で行う質問紙調査の実施が繰り越したため。 ①オーストラリアメルボルンで開催される国際ソーシャルワーク会議で研究成果の報告(旅費25万円、学会参加費7万円) ②韓国「高齢者虐待についての意識の調査」(在宅 25万円 施設 25万円) ③日本「高齢者虐待についての意識の調査」(在宅 25万円 施設25万円) ④日本社会福祉学会での共同研究者2名と共に報告(10万円×3人) ⑤韓国にて共同研究者と打ち合わせ(15万円) ⑥Usbメモリ 文具等(3万円)
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