2012 Fiscal Year Research-status Report
スウェーデンの社会福祉分野におけるNPOのアドボカシー機能とその発揮要因
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24730500
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shoei Junior College |
Principal Investigator |
吉岡 洋子 頌栄短期大学, その他部局等, 准教授 (80462018)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スウェーデン / NPO / 社会福祉 / アドボカシー |
Research Abstract |
本研究の目的は、スウェーデンの社会福祉分野(特に、個人・家庭福祉)において、NPOのアドボカシー機能発揮を可能とする要因を明らかにすることであるが、2012年度は主に8月に実施したスウェーデン現地調査を通して、3つの成果を得た。 1つ目は、文献収集及び現地研究者とのディスカッションから、本研究の分析に大いに参考となる理論的知見を得たことである。本研究のキーワードである「アドボカシー」という用語・概念自体をより的確・厳密に捉えて、類義語との差異を意識して用いる必要があることが明確になった。 2つ目は、10月の日本社会福祉学会で口頭発表を行った際、活発な質疑応答の時がもたれ、本研究にとって非常に有益な指摘・助言を得ることができたことである。イギリスのアドボカシー実践の実際についても学ぶことができ、上記1点目にも共通するが理論的部分での研究進展にとって非常に有意義であった。 3つ目は、個別のNPOの実践・戦略について、実際的・具体的な知見を得ることができたことである。8月の現地調査において、里親支援機関等へインタビューを実施したことから、NPOと行政の関係性について新たな視点を獲得した。リサーチクエスチョンの一つである、NPOがいかに独立性・批判性・先駆性といった特性を発揮しつつ、行政と対等かつ友好的関係を構築しているのか?を考察するためのヒントを得た。 以上の通り、研究目的で示したマクロの観点(歴史・制度政策綿)とミクロの観点(個別のNPO実践)の双方から、初年度として概ね計画通りに研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」で示した通り、計画していた現地調査により、文献資料・情報収集、NPOでのインタビュー、現地研究者とのディスカッションを有意義な形で実施することができた。そして、研究目的であげた2つの観点(マクロ、ミクロ)各々について、着実に研究を進めることができた。 ただし、今年度到達したのは、あくまで本研究の分析の土台となる視点獲得や概念理解である。今後早々に、理論的な分析枠組みを明確に確定することが不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今後2年間、次のような方策で推進していく予定である。 まず、2013年度中に理論的部分を確実に発展させ、分析枠組みを明確化することである。研究上の困難として、スウェーデンではNPOのアドボカシー機能発揮が当然とみなされ、それが議論や文献で中心テーマとして殊更にとりあげられないという現実に直面している。しかし、引き続き現地研究者とのコンタクトや交流を深め議論しながら、2013年度ちゅうに基本的な分析枠組みを明確化し、2013~2014年度での分析と成果公表につなげていく。 次に、歴史・制度制作的な面(マクロの観点)でのスウェーデンの特徴は、日本の学術界にとっての情報価値としても非常に大きいことが判明してきた。そこで、例えばレミス制度についてまとめ、紀要論文等の形で公表していく。 また、団体ごとの実践・戦略について、いくつかの団体(これまでにインタビュー等で関わった所)を取り上げ具体的に示す形で、ミクロの観点での研究成果として、学会発表を行う(第一段階として、2013年度日本NPO学会予定)。 さらに、2013年度には現地研究者招聘を実施し、日本とスウェーデン双方の事情や観点を共有することで、スウェーデンに関しても一層深い議論を進めていく。これを踏まえて、最終年度(2014年度)にはスウェーデンの大学での本研究課題に関連する研究会開催につなげる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の研究費は、現地スウェーデンの研究者招聘(旅費)が最も大きな部分を占める予定である。研究計画で当初から示している通り、現地研究者との緊密な連携また議論を重ねて研究を進めることが本研究課題の一つの大きなポイントである。2012年度と2014年度は研究代表者によるスウェーデン訪問、2013年度はスウェーデンの研究者の日本への招聘という形を計画していたが、変更なく実施する予定である。 研究計画、研究費使用計画について、大きな変更予定はない。ただし、現地研究者を日本に招聘する際、現場訪問先や研究会の内容をできる限り早い段階で決定し、打合せを進めることが重要になってくるため、スムーズな受け入れ準備を整えることが現状での課題である。 現地研究者招聘以外では、前年度をベースとして理論的部分での更なる発展のため、文献資料収集が必要となり購入を予定している。また、情報収集と成果報告のため国内学会への参加も予定している。
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