2012 Fiscal Year Research-status Report
空間統計学を用いた態度構造と態度変容の三次元モデルの構築
Project/Area Number |
24730510
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小杉 考司 山口大学, 教育学部, 准教授 (60452629)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的態度 / 空間統計学 / グループ・ダイナミックス |
Research Abstract |
初年度は,元になるデータの収集と基本的な空間統計モデルの適用を目指した。今後の展開に備えて,まずは静的な空間モデルのあてはまりを検証する,記述・表現段階であった。分析に使用したデータは,小集団における成員相互の認知的評定(ソシオメトリックデータ)であり,四つの集団を時系列で追跡したものであった。分析に際して,二次元空間に第三の次元を外挿する方法をとり,観測されていない座標の高度をAbelson法,IDW法,Kriging法の三種類で推定した。二次元空間の作り方は,ノンパラメトリックMDSを採用したが,ソシオメトリックデータは非対称行列であるため非対称MDSの方法を考える必要があった。そこで第三次元に非対称成分を付加してモデリングを行い,行動計量学会と九州心理学会において発表を行った。 学会報告では,非対称データの分析方法として多くの知識を得るとともに,空間統計学に確率分布を入れる非対称フォン・ミーゼス尺度法について知見を得,今後のモデリングの参考になった。また,表現の性質として第一・第二次元に対して第三次元は論理的に関係が示されつつも,異なる測度で形成されている必要があること,非対称成分やリーダーシップ得点などのいくつかの方法を当てはめてみたが,いずれも第三次元方向における論理的整合性が必要であり,検討の余地があることが明らかになった。 二月末には学外から研究者を招いて研究会を開き,次年度につながるデータ収集について多くの有益なコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
四年計画の初年度としては,ほぼ計画通りに達成しており,空間補間法については十分な運用データを収集できたと考える。三つの空間補間法を比較検討し,社会心理学的データにはAbelson法かIDW法が適していることが明らかになった。またデータとして,10点以上20点未満のポイントが収集されていること,第三次元として異なる測度のデータを収集する必要があることなど,データ収集上の留意点も明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこのモデルを動的なものに展開していく必要があり,そのためには論理的整合性のある空間構成をする必要がある。ただし,社会心理学的・対人態度的モデルとして考える場合,新たに非対称性,推移性と対称性の乖離をどのようにモデリングするかという問題があることが明らかになった。広義の非対称性としてこれを捉え,過去の認知的整合性理論の自然な拡張となるべくモデルを構成する必要があり,非対称多次元尺度法の捉え直し並びにR環境での実装を計画に加えなければならない。 また,研究会においては,ソシオメトリックデータの妥当性問題が指摘され,心理変数ではなく行動変数を測度とする着想を得た。次年度はこの方法に基づいてデータ化する予定である。また,モデリングの可能性を広げるため,旅行者データの旅行経験並びに土地の魅力度を変数とした調査計画が立てられ,これも次年度に実施する運びとなった。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な用途は二つ。一つは,インターネット調査会社を使った旅行者データを収集することが挙げられる。地理的距離データ,交通に要する時間としての距離データ,心理的距離データの三つの次元から測定することで,異なる測度から作られる空間上のモデリングを推進することがこの調査の狙いである。少数であっても,全国に調査対象者を展開し,被調査者の旅行経験ならびに印象評定をもとにデータを構築する。また,地理的距離データ,交通に要する時間としての距離データについては,地図や時刻表などから入力できるデータであり,謝金が発生する。 第二の用途は旅費である。旅行データやソシオメトリックデータなど,社会心理学的データの収集,分析についての助言を得るために,社会心理学関係の研究者と交流すること,空間統計学や多次元尺度法など,統計モデリングについての助言を得るために行動計量学会への参加など,研究者間の流動性を確保するために使われる。
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