2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児における心の理解と自我発達:性格特性推論との関連
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24730513
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
長田 瑞恵 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80348325)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心の理解 / 特性推論 / 原因帰属 / 内的要因 / 外的要因 / 発達的変化 |
Research Abstract |
【研究1】原因帰属推論としての性格特性理解 第1年度は心の理解の一側面として性格特性の理解に焦点を当て,原因帰属推論として幼児期の特性理解を捉え直し,結果の原因の帰属先や行為者の違いによって幼児の性格特性推論が影響を受ける可能性について検討することを目的とした。 *被験者:3・4・5歳児各30名,成人252名 *実験計画 年齢(4)×主人公の動機(ポジティブ;P,ネガティブ;N)×結果(P,N)×提示順序(動機先,外的要因先)の4要因配置。 動機,結果は被験者内要因,年齢と提示順序は被験者間要因。 *手続き:動機(P,N)×結果(P,N)×提示順序(動機先,外的要因先)の3条件を操作したストーリーを作成し,被験者に対し主人公の動機と結果の組み合わせ(PP,PN,NP,NN)を操作した8つのストーリーを静止画と共に提示し,①どうして「結果」は生じたか,②主人公は良い子か悪い子か,③ ②の判断理由を質問。 *結果 現時点で成人の分析が終了している。その結果,以下の3点が明らかになった。1. 原因帰属 全条件で動機と外的要因の提示順序の効果が明らかであり,先に動機を提示された場合には結果の原因を動機に,先に外的要因を提示された場合には原因を外的要因に帰属した。 2. 特性推論 PP条件(動機P,結果P)とPN条件(動機P,結果N)では提示順序にかかわらず主人公は「良い子」に。NP条件(動機N,結果P)とNN条件(動機N,結果N)では提示順序に拘わらず主人公は「悪い子」と判断された。 3. 特性推論の根拠 全条件で特性推論の根拠として主人公の動機が挙げられた。以上の結果から,成人は出来事の結果の原因は時間的配列に基づいて判断するのに対し,主人公の特性は主人公の動機(内的要因)に基づいて判断することが示された。 幼児データは現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1年度は研究1として,原因帰属推論として幼児期の特性理解を捉え直し,結果の原因の帰属先を内的要因と外的要因の2種類設定することによって,幼児の特性推論の結果が異なるか否かを実験によって検討することを目的としていた。 その結果,年度終了時点において,当初の予定通り実験を実施した。したがって,研究計画そのものはおおむね順調に進展しているといえる。さらに,成人についての分析から,成人は出来事の結果の原因は時間的配列に基づいて判断するのに対し,主人公の特性は主人公の動機(内的要因)に基づいて判断することが示された。 しかし,幼児データは収集に予定していたよりも時間を要し,またプロトコルデータの文字化にも時間を要したため,いまだ分析が途中の段階である。そのため,交付申請書に記載した「研究の目的」の中の仮説①「原因帰属判断において内的要因と外的要因のいずれを重視するかの判断には発達差があるだろう。」,②「内的要因に原因を帰属する子どもは,それに応じた特性推論判断をするだろう。」,③「外的要因に原因を帰属する子どもは,特性推論判断への反応が不安定だろう。」の3点についての検討が終了していない。したがって,早急に幼児データの分析を行い,当初の研究目的の仮説検証まで終了させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 第1年度の研究計画の一部であった「研究1」の幼児データの分析を終了させ,仮説の検証を行う。 2. 研究2として,特性推論において行為者が自己の場合と他者の場合とを設定し,さらに結果の原因の帰属先を内的要因と外的要因の2種類設定することによって,幼児の推論結果が異なるか否かを実験によって検討する。加えて,性格特性の理解は心の理論の発達や心的用語や自称詞の使用状況と関連するか否かを検討し,最終的に自我の発達との関連を含めた要因間の関係を明らかにすることを目的とする。そして,研究2を年度初 頭の6月頃と,年度終盤の翌年1月頃に行い,各要因の発達の順序性や相互の関係の詳細を検討する。 *被験者:3・4・5歳児各30名(合計90名) *調査時期 第1回調査平成25年6月頃,第2回調査平成26年1月頃 *実験計画 年齢(3:被験者間)×行為者(2:被験者内)の2要因配置。*手続き:①特性推論課題:研究1で用いるストーリーの行為者を自己の場合と他者の場合の2種類用意し,パソコンを使用して幼児に提示する。そして,結果の原因,行為者の性格特性について幼児に判断を求め,判断理由の回答を求める。幼児の反応はビデオ録画する。 ②会話場面の観察:対象児が同輩や保育者と会話する場面を各児30分ずつビデオ録画し,発話プロトコルを作成し,自称詞と心的用語の種類・頻度・言及対象を記録する。 ③心の理論課題:心の理論課題を行って心の理論の発達の指標とする。 *分析:①特性推論課題は,ビデオ録画された幼児の反応から発話プロトコル分析を行う。理由の分析により,幼児の推論過程がより詳細に明らかになると考える。②自称詞と心的用語:会話場面の発話プロトコルの質的・量的分析を行う。③特性推論課題,自称詞・心的用語使用・心の理論課題の得点の関連を量的分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. H24年度予算残高については,第1年度の研究計画の一部であった「研究1」の幼児データの分析を終了させ,仮説の検証を行うための分析補助,消耗品購入に充てる。 2. H25年度研究費については,実験実施に必要な物品・消耗品(PCメモリ,記録用紙など)の購入に300,000円,データ収集や研究成果の発表のために学会参加旅費として200,000円,データ収集・データ整理補助などの人件費や研究協力園への謝金として200,000円,その他通信費などとして100,000円を使用予定である。
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