2013 Fiscal Year Research-status Report
対人コミュニケーションの日本・中国間比較に関する実験研究
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24730525
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
木村 昌紀 神戸女学院大学, 人間科学部, 講師 (30467500)
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Keywords | 対人コミュニケーション / 日本人 / 中国人 / 自己呈示 / 非言語行動 / 関係性 / コミュニケーション認知 / パーソナル・スペース |
Research Abstract |
本年度の主要な研究目的は、これまでに実施した友人関係と未知関係を対象とする実験データをもとに、対人関係の進展に伴う対人コミュニケーションの変化について、日本・中国間比較を行うことであった。 研究1として、情緒志向性の高い、親密な会話における日本人と中国人の共通点と相違点を検討した。日本人の実験参加者は未知関係20組40名(平均年齢19.20歳、標準偏差0.99歳)と友人関係20組40名(平均年齢20.10歳、標準偏差1.13歳)、中国人の参加者は未知関係20組40名(平均年齢20.50歳、標準偏差0.72歳)と友人関係20組40名(平均年齢19.05歳、標準偏差0.78歳)であった。会話は、キャンパス・ライフについて自由に話すもので、VTRで撮影した。会話終了後に質問項目に回答を求めた。研究2では、課題解決志向性の高い、討議的会話における日本人と中国人の共通点と相違点を検討した。同一の参加者に、社会的問題から関心あるテーマを選んで、討議して結論を出すように求めた。 従来の研究では、欧米と対比して東アジアの日本人と中国人の共通点が注目されていた。研究1・2の結果、本研究でも、両国とも他の動機よりも親しみやすさの自己呈示動機が高く、他者との調和を目指す志向性があらわれていた。親密な会話では、両国とも未知の相手より友人の方が社会的望ましさの動機が高かったが、うなずきや視線は友人よりも未知の相手に対して多く生起していた。加えて、友人よりも未知の相手には距離をとり、慎重に接していた。他方、日本人と中国人の交流を阻害しうる相違点もみられた。日本人の方が中国人に比べて、外見的魅力、社会的望ましさが高く、日本人の笑顔やうなずきの多さとも整合していた。親密な会話では日本人のみ親しみやすさの呈示動機が未知より友人で高かった。一方、討議的会話では日本人のみ友人より未知の相手に笑顔が生起していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、関係の進展による対人コミュニケーションの変化に関する日本・中国間比較を実施した。データの分析・考察を行い、それらの研究成果や、これまでの他の研究成果を複数の学会で発表することができた。特に、日本心理学会第77回大会では「日本人と中国人の討議的コミュニケーションは何が違うのか?-未知関係と友人関係を対象にした実験的検討-」で特別優秀発表賞を、日本感情心理学会第21回大会では「日本人と中国人の親密なコミュニケーションは何が違うのか?-未知関係と友人関係を対象にした検討-」で優秀発表賞を受賞し、高い評価をいただくことができた。他にも、The 10th Biennial Conference of Asian Association of Social PsychologyやThe 13th European Congress of Psychologyなどの国際学会で研究成果を報告し、多くの研究者と意見交換をすることができた。 また、本年度はこれまでの日本と中国での会話実験で収集した音声データについて、文字起こしを行い、発話内容の分析にも着手した。発話内容の特徴について、仮説を知らない研究補助者に評定を依頼して作業を進めている。本年度末時点で、半分が完了しており、次年度中に発話内容の分析・考察を行える予定である。 中国での新たな会話実験の実施においてのみ、現在の日本と中国の国家間の緊張状態も影響し、調整が遅れている。ただし、調整は遅れながらも進んでおり、次年度中には実施する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに学会で報告した、対人コミュニケーションの日本・中国間比較に関する研究結果について論文執筆を行い、学術雑誌に投稿予定である。 また、現在進めている発話内容の分析について、研究補助者による作業が完了次第、分析・考察を行い、言語的コミュニケーションの日本・中国間比較の結果をまとめる予定である。それと、これまでにまとめた非言語コミュニケーションの日本・中国間比較の結果とを合わせて総合的に考察していく。 そして、これまでが協調的なコミュニケーションを対象にした検討だったのに対して、非協調的なコミュニケーションを対象にした検討に着手する。具体的には、競争的コミュニケーションや葛藤的コミュニケーション場面での比較実験の実施をスタートする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、近年の日本と中国における国家間の緊張状態の影響を受け、中国での実験実施のための調整が遅れた。これにより、本年度は中国への渡航費用や研究実施場所借り上げ料、実験参加者への謝金を使用せず、次年度に研究を実施する際に持ち越すこととなった。 次年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。 まず、これまでの研究成果を論文化する際、国際的な学術雑誌への投稿を予定しているため、英文校閲の費用を要する。次に、現在進めている発話内容の分析の際、発話特徴の抽出を依頼している研究補助者への謝金を支払う予定である。そして、非協調的なコミュニケーション(競争・葛藤)の日本・中国間比較研究を行うため、日本での実験参加者への謝金、中国での実験参加者への謝金、研究実施場所借り上げ料、中国への渡航費用が発生する。実験実施後は、複数名の研究補助者に、日本人と中国人のコミュニケーション行動の定量化を依頼する際に、謝金を支払う計画がある。
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Research Products
(7 results)