2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児期の教示行為の発達過程とそれを支える保育者の役割の検討
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24730561
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Research Institution | Nagoya College |
Principal Investigator |
小川 絢子 名古屋短期大学, 保育科, 助教 (60609668)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 幼児期 / 教示行為 / 抑制 / 見守り / 保育者 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幼児期における教えあいの行為を、子どもの発達的変化とそれに対する保育者の認知という両側面から検討することであった。 平成24年度には、幼児を対象とした教示行為の理解課題を、保育園へ通う年中児、年長児を対象に実施した。学び手である友だちの心的状態 (知識・欲求・信念) を操作したストーリーを複数作成し、質問を実施した。また、子どもの教示行為に対する質問紙調査を、保育園に勤務する保育者を対象に実施した。幼児の教示行為の理解課題と同様の課題材料を用いた。 結果、子どもの教示行為の理解の発達に関しては、学び手の「自分でできるようになりたい」という欲求状態が明示された場合、年中児では「教える」を選択する子どもが多く、年長児では「教えないで見守る」を 選択する子どもが増えることが明らかになった。予備調査の結果を日本心理学会第76回大会で発表した。 保育者の認知と働きかけに関しては、保育者は、子どもの年齢や心的状態の明示の有無にかかわらず、「子どもは教える」と認知していた。また、学び手の心的状態が明示されない条件においても、「教えないで見守る」ことを子どもに期待し、それに合わせた働きかけを行うことが明らかになった。この結果を名古屋短期大学紀要に論文としてまとめた。 本研究の意義は、幼児と保育者に同じ場面を呈示し、両者の関連性を検討できることにあった。幼児は年中から年長にかけて「教えないで見守る」ことが可能になるのに対し、保育者は子どもの年齢に関係なく「子どもは教える」と認知していることがわかった。また、子どもの年齢に関係なく保育者は子どもに「教えないで見守る」ことを期待していることが示された。以上のことから、本研究は、子どもの教示行為の発達と保育者による子どもの教示行為の認知との関連性を明らかにした初めての実証研究として重要な成果を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、幼児期における教えあいの行為を、子どもの発達的変化とそれに対する保育者の認知という両側面から検討することであり、平成24年度の研究実施計画は、幼児を対象とした仮想場面を用いた教示行為の理解課題を実施するとともに、保育者を対象に幼児と同様の条件や場面を使用した質問紙調査を実施することであった。 広島県の私立保育園に調査を依頼し、年中児と年長児を対象に課題を実施した。また同園の保育者を対象に質問紙調査を実施した。 研究の結果から、幼児は年中から年長にかけて「教えないで見守る」ことが可能になるのに対し、保育者は子どもの年齢に関係なく「子どもは教える」と認知していることがわかった。また、子どもの年齢に関係なく保育者は子どもに「教えないで見守る」ことを期待していることが示された。以上のような新しい知見を研究計画にそって示すことができたため、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に得られた結果を基にして、次の2つの仮説を検証するための実験および調査を実施する。「仮説1: 年中児は、学び手の欲求状態にかかわらず、教え手である自分がやって見せるなど、直接的な教示行為が多く、「教えないで見守る」ことが少ないのに対し、年長児になると学び手の欲求状態に応じて「 教えないで見守る」ことが増え、教示行為を使い分ける」、「仮説2: 保育者は、年中児では直接的な教示を行うと認知し、教えることを強調する働きかけ行う。年長児は教示行為を使い分けると認知し、学び手の欲求状態により見守ることを強調する働きかけが増える」 実験場面での教示行為課題を年中児、年長児各35名に実施する。課題では、学び手である友だち (手人形を用いる) の欲求状態を操作した上で、学び手に対する教示行為の有無やその内容をビデオにより記録する。課題はパズルを使用し、学び手がパズルを行う際の子どもの行動や発言、視線などの指標から教示行為を測定する。子どもの教示行為に対する質問紙調査を保育者に実施する。幼児の教示行為課題と同様の場面を質問紙で呈示し、平成24年度と同様に、選択と記述により回答してもらう。予想される結果は、年中児から年長児にかけて教示行為の発達的変化がみられ、保育者の認知や働きかけも年齢に対応して変化すると考えられる。 また、平成24年度の成果を本研究の研究成果について、報告書を作成し、保育園の保育者にフィードバックする。加えて、本研究の成果は、子育て支援や幼保小連携といった教育実践にも役に立つものであるため、研究活動の成果を保育者と共同で行う研究会や学会等で発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、子どもを対象に実験場面の課題を行う。その際には、課題材料の作成に関わる費用が必要になる。また、実験場面の撮影に複数台のビデオカメラを用いるため、ビデオカメラを購入する。加えて、ビデオで撮影した映像を処理するためのPC、動画編集用ソフトなどを購入し、動画編集やデータ解析については補助者へ依頼する。保育者を対象とした質問紙調査には、質問紙の作成に関わる費用が必要になる。 また、調査研究のための旅費や研究発表旅費が必要である。さらに、成果を論文や報告書としてまとめるために、論文印刷費を使用する。
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Research Products
(4 results)