2012 Fiscal Year Research-status Report
なぜ赤ちゃんは抱っこすると泣きやむのか:乳幼児と仔マウス輸送反応の比較生理学
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24730563
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
エスポジート ジャンルカ 独立行政法人理化学研究所, 黒田研究ユニット, 国際特別研究員 (10618341)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Infant carrying / 親子間愛着行動 / Infant calming response / Carrying in humans / Maternal carrying / Transport Response |
Research Abstract |
健常乳幼児(0~6カ月)のTRについて系統的な研究を行った。20組の健常乳幼児(0~6カ月)とその母親について実験を行うことができた。実験の手順として、以下の2種類の行動を交互に乳幼児の母親に行ってもらった。(1)椅子に腰掛けた状態で母親が乳幼児を抱っこする。(座って抱っこ)(2)歩いている状態で母親が乳幼児を抱っこする。(歩いて抱っこ)。そしてこの間の乳幼児の発声、泣き声、体の動きを、2台のビデオカメラと高品位マイクで記録録画した。また、乳幼児の心拍数をホルター心電図(EKG)記録装置を用いて観察した。 歩きながらの抱っこをしている状態の乳幼児のデータを集積し解析した。母親が立ち上がって歩き始めると、乳幼児の動きは顕著におとなしくなり(t, Student’s t test: t(11) = 5.21, p < 0.001)また泣きやんだ。(t(11) = 4.01, p < 0.001)さらに、乳幼児の心拍間隔が抱っこして歩き始めるとすぐに増大することが分かった。(increase (mean ± SEM) = 7.39% ± 0.04%, time constant = 3.16 s; corresponds to eight heartbeat counts; t(11) = 5.08, p < 0.01)その後、副交感神経の活動を見るために、rMSSD(隣り合った RR 間隔の差の二乗の平均値の平方根)を計算することにより心拍変動解析を行った。その結果、座って抱っこされているよりも歩いて抱っこされている方が明らかにrMSSDの値が高くなることが分かった。(t(12) = 2.07, p < .001)これらのデータにより、乳幼児は座って抱っこされているよりも歩いて抱っこされている時の方がよりリラックスしている状態にあることが行動学的だけでなく生理学的にも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト乳幼児とマウスの仔に対する様々な実験を実行できた。 また、2013年度に行う実験の予備実験も行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
TRの制御機構を明らかにするため、近交系C57BL/6マウスを用いて実験を行う。 マウスTRは母親の輸送を真似て、実験者が指で仔マウスの首背部の皮膚を軽くつまみあげることでも簡単に誘導できる。(”TRの手動的誘導”(ウィルソン他2002年)そこで本研究では実験者が仔マウスをつまみTRを誘導する。TRは離乳前に一過的に見られる反応であるため、生後4日から14日齢のマウス(40匹:オス20匹、メス20匹)を使って実験を行う予定である。 ヒト乳幼児のデータと比較するたため、TR中の心拍数、姿勢や動きについても記録する。加えて、自閉症障害などのような疾患モデル動物についても実験を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度内に、研究に有意義と思われるいくつかの主要な国際会議・ワークショップに参加することができなかった。また、予定していたPCの購入も見合わせた。 繰り越した研究費は、2013年度初頭に使用予定である。集積したデータの成果発表をするための旅費、及びより多くの被験者に対する実験を行うために使用する。
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Research Products
(17 results)