2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730564
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
神長 伸幸 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90435652)
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Keywords | 言語発達 / 眼球運動 / 読み理解 |
Research Abstract |
本年度は、言語処理の逐次性を話し言葉理解と読み理解の両面から検討した。 1、 幼児の話し言葉の逐次性に関する研究: 本年度は、前年度に行った実験データを論文としてまとめた。2本の論文として投稿予定である。 2、 児童の読み理解における逐次性の発達: 言語理解の逐次性の発達を考える上で、話し言葉に加えて、読み理解を検討する重要性が明らかになった。そのため、児童の文章読解中の眼球運動を測定する実験データを解析した。読みにおける逐次性は、現在停留中の単語の処理に加えて、近中心窩にある単語の処理が重要となる。特に日本語では、単語間に空白を挟まず、漢字かな混じり文であるという言語特有の特徴があり、成人の読み手がこの特徴を利用して、近中心窩内の漢字文字に停留する方略を用いることが知られている。本研究は、この方略の使用の発達的変化を検討した。小学校3年生、5年生、大学生を対象とした実験の結果より、漢字文字を停留する方略が小学校3年生の時点で見られ、小学校5年生になると方略の使用がさらに顕著になることが分かった。この知見はReading & Writingにて出版された。さらに、別の実験では小学校2年生、4年生、成人を対象に、文章の文節間に空白を挟むこと(いわゆる分かち書き)が読み理解に及ぼす影響を読書中の眼球運動を指標に検討した。その結果、分かち書きの効果は小学校2年生でもっとも顕著であり、発達に伴ってその効果が次第に小さくなることが分かった。この結果は、小学校2年生までの学校教科書では分かち書きが行われており、それにあわせて読み手が文章内に空白をはさむことを前提とした方略を用いことを示唆する。これらの知見のまとめとして、近中心窩内で手がかりとする情報が小学校3年生を境目に空白から漢字文字へと移行することが示唆された。この知見についても論文としてまとめ、学術雑誌へと投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
読み理解の検討は、方法として当初の計画に盛り込まれたものではなかった。しかし、話し言葉と読み理解の両面から逐次性を探ることで、両者の共通性を考察する契機がうまれた。また、幼児に加えて、小学校児童を研究対象として、研究対象を拡大できた。このように本年度の研究は、言語理解の逐次性の発達の研究という目的を当初の計画よりも幅広く検討することにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
幼児の実行機能の発達と言語処理の逐次性、それに伴う再解析処理の関連性を検討する実験研究を行いたい。また、研究の最終年度であることから、研究全体の総括として、言語理解における逐次性の発達的変化について総合的な考察を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追加実験を実施しなかったため、被験者謝金および取得データの保管に必要な消耗品費を翌年度へと持ち越すこととした。 追加実験における被験者謝金、取得データの保管に必要なメディア、ハードディスクドライブの購入。また、論文の英語校正として使用予定である。
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