2012 Fiscal Year Research-status Report
コンピューターによる解釈バイアス修正法(CBM-I)の開発とその効果研究
Project/Area Number |
24730569
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
寺島 瞳 筑波大学, 人間系, 助教 (30455414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | CBM-I / 解釈バイアス / 肯定的解釈トレーニング / 対人不安 |
Research Abstract |
不安や抑うつの強い人は,肯定的とも否定的ともとれるあいまいな出来事を否定的に解釈しがちな傾向にある。このような傾向を修正する方法の中で特に認知バイアスの修正に特化した方法に,「認知バイアス修正法(Cognitive Bias Modification:CBM)」がある。認知バイアス修正法には,注意バイアスと解釈バイアスを対象とした二種類がある。後者は「解釈バイアス修正法(CBM for Interpretation:以下CBM-I)」と呼ばれている(Mathews & Mackintosh,2000)。これは,コンピューターを介して,あいまいな刺激とその肯定的な解釈に繰り返しさらすことによって,解釈のバイアスを修正する方法である。 CBM-Iの効果は少数の研究により示されているが,まだ十分に検証されていないのが現状である。さらに,日本においてこの試みは用いられていない。そこで,CBM-Iの日本語版を開発し,その効果を検証することが本研究の目的である。 平成24年度は,まず日本心理学会第76回大会にてCBMに関するワークショップに参加した。その際に,注意バイアスに関するCBMを実践する研究者と情報交換をした結果,来年度の第32回心理臨床学会にてCBMに関するシンポジウムを共催することとなった。 また,本研究を実施するまでの準備として,オックスフォード大学(Lang, Blackwell, Harmer, Davison & Holmes,2012)から研究に利用する刺激文を,契約書を交わした上で譲り受けた。刺激文は,肯定的にも否定的にも解釈できる状況を提示したあとで,その肯定的な結果を提示する内容となっており,全部で448文ある。その中で対人不安に関連した文章を邦訳し,心理学を専攻する大学院生2名ともに表現や内容が日本での利用に適しているか検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は主に文献研究を中心に行い,これまでの先行研究を参考に日本の文化に適したあいまいな状況に関する刺激文をできるだけ多く作成することが目的であった。その点で,多くの刺激文をきちんとした契約書のもとに譲り受け,邦訳作業に入った点で,目的は達成したと言える。さらに,認知行動療法に関する学会に参加することはかなわなかったが,日本心理学会にてCBMを行う研究者と情報交換ができた。また,パーソナリティに関する学会にも参加し,解釈バイアスに関連する特性として完全主義傾向や自己愛傾向などのシンポジウムから示唆を得た。そして,倫理委員会に申請し,本研究実施の準備を進めた。よって,おおむね順調に進展していると考えられる。ただし,平成24年度中にレビュー論文を作成すること,および調査対象者募集には至らなかった。平成25年度の前半にはこの課題に着手し,介入研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年は,介入研究を行う。解釈バイアス修正法を刺激文のみ(研究2)とイラスト入り(研究3)の2回行うことで,介入効果の大きい刺激文を選出する。 研究2では,研究1で収集した刺激文を用いてウェブ調査画面を利用した解釈バイアス修正法を作成し,介入効果を検討する。大学生を対象として,社会相互作用不安尺度(SIAS), 抑うつ尺度(BDI),状態・特性不安検査(STAI)を実施する。得点の高い大学生80名をランダムに介入群と統制群へ分ける。1週間の介入期間中に,介入群はコンピューター上で毎日少しずつ回答する。記述の選定のために,各記述に関して「どれだけ鮮明にその状況をイメージできたか(鮮明度)」「このような状況で悩んだことが過去にどの程度あったか(体験頻度)」についても適宜回答を求める。また,介入効果の検討のため,介入前後および介入群と統制群でSIAS,BDI,STAI得点を比較する。 研究3では,研究2で選出された刺激文にイラストをつけて新たな介入刺激を作成し,同様にその効果を検証することを目的とする。先行研究では文章のみが視覚的もしくは聴覚的に提示されているが,本研究ではよりイメージしやすいように文章のみではなくイラストを添えた刺激文を作成することでより大きな介入効果を得ることを目指す。イラストは本学芸術学群の学生に依頼する。調査対象者は,研究2での統制群とする。介入の方法,アウトカムなどは研究2と同様である。介入効果は介入前後の各得点を比較することによって行う。研究2,研究3の結果は,第32回心理臨床学会にて発表する。また,国内外の学会に参加することで,実践に関する示唆を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として,情報収集のための書籍および論文印刷代に41,000円,研究2,3での対象者募集のため,コピー用紙,Adobe Illustrator CS5 for Winアカデミック版,郵送費,文具,調査用紙などに65,000円,ウェブを介した介入実施のためウェブ調査作成サービスの利用費に50,000円,ウェブ調査画面確認用のAndroid端末に30,000円,デスクトップパソコンに142,000円使用する予定である。 人件費として,研究2,3の実施およびデータ処理補助に106,000円,イラスト作成費に106,000円使用する予定である。 旅費として,研究発表として第32回心理臨床学会,情報収集として第13回認知療法学会,第77回日本心理学会,The Evolution of Psychotherapy,2013にそれぞれ参加するため,260,000円使用する予定である。 その他として,通信費に30,000円,勉強会開催費として10,000円使用する予定である。
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