2012 Fiscal Year Research-status Report
プレッシャーによるパフォーマンス抑制に対する心理臨床的介入法の開発と検討
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24730579
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山内 星子 名古屋大学, 学生相談総合センター, 特任助教 (00608961)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プレッシャー / パフォーマンス / NIRS / 生理的指標 |
Research Abstract |
本研究の目的は、プレッシャーがパフォーマンスを抑制するメカニズムを明らかにする実験を行い、その結果に基づいて、臨床的介入法の開発を行うことである。検討を行うにあたり、本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて前頭前野活動を測定する計画となっていた。しかし、申請書提出後に発表された論文(Takahashi et al., 2011)において、顔面領域の皮膚血流によってNIRS信号が説明されるという知見が報告された。これを受けて、NIRS信号の妥当性を再検討するため、新たに実験を追加した上で(実験1)、当初計画されていた「スピーチ課題時におけるプレッシャーがパフォーマンスに影響を与えるメカニズム」についての実験(実験2)を実施した。 実験1では、NIRS信号の妥当性を再検討するため、認知課題中のNIRS信号(前頭前野)と顔面皮膚血流を同時測定し、各指標の比較検討を行った。その結果、認知的負荷が大きい状況下では、顔面血流の説明率は大きく低下することが明らかになった。したがって、課題中のNIRS信号に対する顔面血流の説明率は、NIRS信号の妥当性が損なわれるほど大きいものではないと結論付けられた。これは、これまでブロックデザインを利用して行われてきた研究の測定の妥当性をある程度保障する結果であり、非常に重要である。ただし、今後の実験では、顔面血流を同時測定し、その影響を統制した上で結果を検討することとした。 実験2では、プレッシャー状況下におけるパフォーマンス抑制のメカニズムについて、NIRS信号および自律神経系指標を用いて検討を行うことが目的である。プレッシャーの高条件(2名の実験者がその場でスピーチを聞いて評価する)、低条件(実験者がいない場所でスピーチをする)の2条件を設定し、21名を対象に実験を行った。現在、結果を分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、申請書提出後にNIRS信号の妥当性に関する重要な論文(Takahashi et al., 2011)が発表されるという予定外の事態が発生した。しかし、速やかに再検討のための実験を組み立て、実施した。その結果、NIRS信号の一定の妥当性を再確認するとともに、より妥当性の高い数的処理の方法を発見した。 その結果に基づき、予定していた実験を実施し、時期的に多少の遅れはあるものの、概ね順調に計画が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度行った実験1の結果を学会、論文等で報告する。また、実験2の結果分析を行い、同様に学会、論文等で報告を行う。 さらに、当初の計画通り、実験2に続いて「パーソナリティがパフォーマンスに与える影響」を検討するための実験(実験3)を行う。具体的には、実験2と同一デザインを用いて、パーソナリティおよび気質得点が平均値から大きく離れた実験参加者を対象とした実験を行い、プレッシャーがパフォーマンスを抑制するメカニズムの個人差を検討する。その予備調査として、大規模サンプルを対象とした質問紙調査を行い、実験参加者の抽出、実験参加依頼を行う。質問紙は、これまでプレッシャーの感受性に関連があるとされてきた不安、抑うつ傾向(市村,1965)、公的自己意識(金本・横沢,2003)など、複数の気質・パーソナリティ尺度から構成し、平均値から2SD以上の差がある回答者に対して実験を依頼する予定である。 さらに、実験4では、実験2、3の結果を踏まえて、課題の種類、パフォーマンスの抑制メカニズムに合わせた臨床的介入法を開発し、実際に実施、効果の測定を行う。Scienceに発表されたRamirez & Beilock(2011)の研究では、実験室場面および実際のテスト場面において、テスト前の感情を紙に書き出すことによってパフォーマンスの抑制が阻止されることが実証的に示された。しかし、この検討ではパフォーマンス抑制のメカニズムや課題の特性による効果の検証はされておらず、より効率的な介入法の開発が必要と言える。実験4では、Ramirez & Beilockの介入法をベースに、パフォーマンス抑制メカニズムを踏まえて、これまでに行われてきた臨床的介入法を組み合わせ、臨床的介入法を構成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、物品費として、結果の処理、分析等に必要なソフトウェア、メディア、PC等を購入する。メディア等については個人情報保護の観点から、パスワードやロックがかかるものを使用し、使用済みのものについてはシュレッダーを購入して処理する。また、実験1、2では映像、音声の質にやや不足な点があったことから、実験3、4を行うにあたり、映像や音声記録について、より適切な機器を購入する。 旅費として、結果の学会発表および研究者同士の打ち合わせ、データ処理の講習等参加のための旅費を支出する。 人件費・謝金として、実験のためのアルバイトの費用を支出する。また、データ整理等においても、人件費を支出する。 その他については、学会参加費、国際学会、国際誌にアプライするための英文校閲、機器のメンテナンス費用を支出する予定である。
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Research Products
(1 results)