2012 Fiscal Year Research-status Report
健康な自己愛における自己価値欲求の脱中心化方略とその心理的効果
Project/Area Number |
24730587
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokusho University |
Principal Investigator |
川崎 直樹 北翔大学, 人間福祉学部, 准教授 (90453290)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自己愛 / 脱中心化 |
Research Abstract |
理論的研究がある程度行われ,既存データとの照合を行った段階である。まず,本研究の中心概念である「脱中心化」や,それを支える「マインドフルネス」について,あらためて臨床的介入技法の実際や理論的背景について文献研究等による整理を行った。文献研究の結果,本研究で想定する「自己価値欲求の脱中心化方略(自分の価値を高めたい・認められたいという欲求にとらわれすぎずに社会生活を送るための具体的な方略)」について,マインドフルネスアプローチの中の,「価値」を重視した介入方略を用いることができる可能性が示唆されている。現在その詳細を検討中である。また,ハーマンスの「対話的自己」の概念や技法を用いた研究についても,その応用可能性を検討中である。一方で,こうした「自己価値欲求の脱中心化方略」を,対人場面でどのように実現するかについては,基礎的知見が乏しい。当初の計画では,会話場面の録画を用いて観察による行動分析を行う予定であるが,今年度はこれを実施することとしたい。 こうした観点に基づいて,研究代表者による「自己価値の源」に関する既存データの再分析を行い,検証を行った。本データは17つの自己価値の源を同定するものであり,不健康な自己愛がどのような自己価値の源に中心化されているのかを示唆するものである。そのデータからは,自己愛的な者は外面的な評価に自己価値を依拠しているが,内発的・自律的な活動によって自己価値を支える傾向が少ない。自己を“充足させるもの”としてではなく,“活かすもの”として体験できるようになることが介入の主眼として示唆されている。今後これらを踏まえた研究の展開を検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進行は,予定よりもやや遅れている状態である。理由として,会話行動の観察調査のための映像記録システムの構築がある。当初の予定では,複数のビデオカメラによる同時録画を行い,相互作用を検討する予定であったが,そうした複数映像を同期させて1つのコンピュータ上の画面で処理するための技術が現状では確定できていない。今後,複数画面を用いての処理など,代替案を検討して対応する予定である。理由の2点目は,尺度作成方法の再検討である。当初の計画では「健康的自己愛」に関して,尺度作成を行う予定であったが,既存の尺度をある程度活用できる可能性が示唆されつつある(例えば,自己価値を脅かす対人ストレスをユーモアで対処する傾向の尺度など)。こうした既存尺度についての分析を現在行っている所であり,計画の再検討を行っている段階であるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
大きく3点の研究を並行していく予定である。(1)まず,会話行動に関する観察・分析である。大学生を中心に実施する予定である。また,映像記録システムについては,研究費の予算枠・期限内で活用できるものを検討している。(2)2点目は,縦断的・追跡的な調査である。大学生の就職活動期における自己の変化を,質問紙ないし面接法によって,追跡する予定である。(3)3点目として,介入効果の検討である。大学生や一般を対象とするか,もしくは高校生年代などより若年層を対象とすることができるか,現在検討や協議を行っているところである。ある程度,幅広い対象に介入を行うことができるか,検討を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度実施予定であった(1)会話行動の観察分析,(2)基礎データ調査について,現状では実施に至っておらず,研究費も使用されていない。(1)については録画装置(備品ないし消耗品;200,000円),実験参加の謝金・映像分析人件費(謝金;100,000円,人件費;100,000円),(2)については,調査依頼謝金(謝金;200,000円)を使用予定である。また,それら結果の公表のための学会旅費(旅費100,000円),その他通信費等(その他;34,036円)を予定している。合わせて,平成25年度の研究計画としては,(3)追跡調査と(4)介入効果の検討を行う必要がある。(3)追跡調査については,上記の(2)基礎データ調査と合わせて実施し,効率的な研究費使用を行う。平成25年度は,(4)介入効果の研究のため,参加謝金と実施協力者の人件費として主に使用する予定である。次年度のこれらの計画に変更が生じた場合には,随時調整を行うこととする。
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