2012 Fiscal Year Research-status Report
歯科恐怖症の改善に有効な認知・行動的対処方略の検討と認知行動療法プログラムの開発
Project/Area Number |
24730597
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
古川 洋和 帝京大学, 医学部, 助教 (60507672)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 歯科恐怖症 / 認知行動療法 |
Research Abstract |
平成24年度は,歯科恐怖症を改善するために有効な認知・行動的対処方略の抽出を行った。 【異常絞扼反射を抱える歯科恐怖症患者の対処方略に関する検討】 これまでの研究では,歯科治療の際の強い嘔吐反射(以下,異常絞扼反射)を抱える歯科恐怖症患者においては,治療プログラムからの脱落率が高い可能性が示唆されていた。そこで,先行研究を精査し,行動的対処方略としての自律訓練法を加えた認知行動療法プログラムを作成し,その効果を検討した。異常絞扼反射を抱える2名の歯科恐怖症患者に作成した治療プログラムを実施した結果,歯科治療の際の異常絞扼反射が消失し,歯科治療に対する恐怖感の評定値も低下した(古川・穂坂,2012)。つまり,異常絞扼反射を抱える歯科恐怖症患者の治療プログラムからの脱落率を改善するために,自律訓練法を用いた対処方略が有効であることが示唆された。 【Dental Coping Strategy Questionnaireに関する展望】 これまでわが国では,歯科恐怖症患者の歯科治療中の対処方略を適切にアセスメントするためのツールが整備されていなかった。欧米では,Dental Coping Strategy Questionnaire(以下,DCSQ:Bernson et al., 2007)が作成され,DCSQの得点は歯科治療に対する恐怖感と関連することが明らかにされている。そこで,DCSQの項目内容が,わが国の歯科恐怖症患者の対処方略をアセスメントすることができるかどうか展望し,その適用可能性を検討した。その結果,DCSQは,わが国の歯科恐怖症患者に十分に適用可能な尺度であることが展望された。 上記の検討から,歯科恐怖症を改善するための有効な認知・行動的対処方略が明らかにされ,次年度に作成する認知行動療法プログラムの内容についての十分な知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的は,歯科恐怖症患者に対する有効な認知行動療法プログラムを開発するために,歯科恐怖症を改善するための有効な認知・行動的対処方略を抽出することであった。 平成24年度においては,研究方法として,歯科恐怖症患者と一般歯科外来患者を対象とし,歯科治療中に対処方略を比較し,歯科恐怖症の改善に有効な対処方略を抽出する予定であった。しかしながら,十分な対象者数を確保することが困難となったため,国内外の先行研究を緻密に精査しながら,少数の歯科恐怖症患者を対象とした調査・実験を実施し,有効な対処方略を抽出する計画へと変更した。 平成24年度に実施した研究の結果,自律訓練法を用いた異常絞扼反射への対処方略とDental Coping Strategy Questionnaireの項目(肯定的な自己陳述やディストラクション)を反映した歯科治療中の対処方略が有益である可能性が示唆された。したがって,当初の目的である「歯科恐怖症を改善するための有効な認知・行動的対処方略の抽出」は達成され,研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,平成24年度において得られた知見をもとに,「標準プログラムの作成(平成25年度)」と「プログラムの効果検討(平成26年度)」を行う予定である。 平成25年度には,平成24年度に明らかにされた認知・行動的対処方略の獲得を目的とした認知行動療法プログラムを作成し,歯科恐怖症患者を対象としたオープントライアルの実施によって,その適用可能性を検討する。 平成26年度には,平成25年度に作成された治療プログラムの効果を無作為化比較試験によって,実験的に検討する。 以上のような検討を通して,治療プログラムの効果を確認するとともに,歯科恐怖症に対する認知行動療法の効果を高めるための方策についての提案を行いたい。 今後の研究においては,多数の対象数を確保することができずに,十分な検出力を有した統計的解析が困難となる事態が起こり得る。その際は,少数の歯科恐怖症患者を対象とした被験者間多層ベースラインデザインによって,作成したプログラムの適用可能性と効果を検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,使用を予定していたデータ処理ソフトが不要となったため,次年度使用額が生じている。しかしながら,次年度においては,データを統計的に処理する必要があるため,翌年度分として計上されている。次年度は,統計解析のためのデータ処理ソフト,パソコン用消耗品,研究成果を発表するための旅費(国内・国外),その他(複写費等)の内訳での使用を予定している。
|
Research Products
(1 results)