2013 Fiscal Year Research-status Report
歯科恐怖症の改善に有効な認知・行動的対処方略の検討と認知行動療法プログラムの開発
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24730597
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
古川 洋和 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (60507672)
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Keywords | 歯科恐怖症 / 認知行動療法 |
Research Abstract |
平成25年度は,前年度に明らかにされた歯科恐怖症を維持する認知・行動的要因の修正を図るためのプログラムを作成し,その適用可能性を検討することであった。具体的には,歯科恐怖症に対する従来の認知行動療法で用いられるエクスポージャーの脱落率およびエクスポージャーに対する予期不安を減弱するために,エクスポージャーの導入前に自律訓練法によるリラクセーション訓練を追加した。さらに,不安・恐怖を強めることが指摘されている自己注目を弱めるために,エクスポージャーの実施中に注意訓練を追加した。 歯科治療に対する不安を測定するためのModified Dental Anxiety Scale日本語版(以下,MDAS:古川・穂坂,2010)得点がカットオフスコアを超える大学生2名(男性1名・女性1名)を対象とし,歯科恐怖症を維持する認知・行動的要因の修正を図るための6セッションで構成される新たなプログラムの効果を対象者間多層ベースラインデザインによって検討した。その結果,2名とも介入期のMDAS得点が,ベースライン期よりも低い値を示した。また,介入終了時のMDAS得点は,カットオフスコアよりも低い値を示し,その効果が介入修了後1か月のフォローアップ期間においても持続していた。 上記の検討から,歯科恐怖症を維持する認知・行動的要因の修正を図るための新たなプログラムは,歯科恐怖症に対する心理療法として,十分に適用可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は,前年度に抽出された歯科恐怖症を維持・悪化させる認知行動的要因の修正を図るためのプログラムを作成し,その適用可能性を検討することであった。 平成25年度においては,歯科恐怖症患者を対象とし,統制群を設定しないオープントライアル形式によって作成した新たなプログラムの適用可能性を検討する予定であった。しかしながら,統計解析に耐えうる十分な対処者を確保することが困難であったため,歯科恐怖症の重症度をアセスメントするためのModified Dental Anxiety Scale日本語版(以下,MDAS:古川・穂坂,2010)のカットオフスコアを超える大学生を対象とし,対象者間多層ベースラインデザインによって,新たに作成したプログラムの効果を検討した。 平成25年度に実施した研究の結果,プログラム終了後のMDASの評定値はカットオフスコアを下回り,新たに作成したプログラムは十分に適用可能であることが示唆された。したがって,当初の目的である「歯科恐怖症を維持・悪化させる認知行動的要因の修正を図るためのプログラムの適用可能性」の検討は達成され,研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,研究の最終年度となる。今後の研究では,平成25年度において作成された歯科恐怖症を維持・悪化させる認知行動的対処方略の修正を目的とした新たなプログラムの効果検討を行う予定である。 具体的には,歯科恐怖症患者を対象とした無作為化比較試験を実施し,平成25年度に作成したプログラムの有効性を検討する。 今後の研究においては,多数の対象数を確保することができずに,十分な検出力を有した統計的解析が困難となる事態が起こり得る。その際は,少数の歯科恐怖症患者を対象とした対象者間多層ベースラインデザインによって,プログラムの適用可能性と効果を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度については、研究成果を公開するためのパンフレットを作成せずにweb公開の準備を進めたため、そのための経費を次年度に使用する。 次年度は、既に得られた研究成果を国際雑誌へ投稿する予定であり、そのための掲載費として使用する予定である。
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